宇宙混沌
Eyecatch

第2章:盗撮 [4/4]

 審神者は部屋の中で嫌な汗をかき始めていた。
(骨喰遅くないか……?)
 心配しながら仕事をしていると、廊下から低い声が響いてきた。
「主」
「入れ」
 江雪だった。努めて平静な顔をして迎え入れる。が、やはり、彼の手の中にあるカメラを見ると動揺を隠せない。
「盗み撮りとは、感心出来ませんね」
 湯から上がって急いで来たのか、まだ湿っている髪を後ろでまとめた江雪は、カメラを床に置きながら空いていた座布団に座る。
「まさか骨喰が本当にやるとは思ってなかったんだ!」
「骨喰?」
 頭を下げる審神者に江雪は驚く。
「獅子王と鯰尾に頼んだのでは、ないのですか?」
「え? いや、私は骨喰に渡したんだが……」
 言ってカメラを手に取る。
「骨喰の事だからすぐに引き返してくると思ったんだ。あの子、お金あっても自分で何も買わないから、誉たくさん取ったご褒美って事で、そのままこれあげようと思ったんだけど」
「そういう事でしたか……」
 壊れてる? と心配する審神者に江雪は表情を緩めた。その眼差しがあまりにも優しくて、審神者は目を逸らす。
「中身は消させていただきましたが、壊れてはいませんよ」
「良かった。そこそこ良い値段するからな」
 江雪は立ち上がる。シャンプーの匂いが審神者の鼻をくすぐった。
「骨喰達は?」
「まだ入っていますよ。その場に居た全員、かなりきつく叱ってしまったので……。可哀想な事をしました」
「いや、獅子王も鯰尾も主体的にやったと思うからそれは良いと思う……」
 そうですか、と言って江雪は去ろうとしたが、ふと、立ち止まって尋ねてみる。
「私も、誉を取れば何かねだっても良いのでしょうか?」
「? 珍しいね。欲しい物でもあるの?」
 審神者は仕事を再開しようとしていた手を止める。
「まあ……」
「ものによるかなー。江雪はあんまり出陣しないから誉も貯まってないし。何?」
 江雪は息を吸った。一拍置いて、その言葉を吐き出す。
「×××××」
「っあ……」
 審神者は想定外の答えに持っていたペンを畳に落とす。
「出来ない事であれば、構いません。今の話は忘れてください」
「……いや」
 くしゃ、と審神者は左手を置いていたメモ帳の一番上を握りしわくちゃにする。
「努力するよ……」
 力んだ体の力を抜き、いつもの調子で付け加える。
「誉だけじゃ足りんな。やはりその浴衣や襦袢を脱いでもらわんと」
 江雪は笑っただけで今度こそ去った。審神者は机に肘を突く。
「……何を考えてるんだか」

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