宇宙混沌
Eyecatch

第3章:武道 [4/6]

「まったく、面白いですね貴方達は」
 執務室。宗三は机の向かい側で頬杖を突いている。彼が今日の近侍だった。
「お互い素直じゃないというか」
「お前には言われたくないな」
 デコピンすると宗三は綺麗な顔をしょっぱく歪める。
「想い合っているのは解りきってるんですから、さっさとやる事やってしまえば良いじゃありませんか」
「神隠しが怖いからな」
「神隠し?」
「江雪様は私の真の名を覚えているかもしれない」
 曲がりなりにも江雪達は付喪神。軽率に本名を教えれば神隠しの危険がある。
「貴方、兄さんに教えたんですか!?」
「審神者になるずっと前に、江雪様に会いに行った事があるんだ」
 此処に居る付喪神達は、それぞれ何処かに存在する本体に宿った付喪神の分霊だ。人間で言えば生霊の様なものである。分霊の記憶や経験は本体や他の分霊とは共有されないが、分霊は魂を分割する前の本体の記憶を持っている。
「会いに、というか、江雪様の本体と拵えを観にね。その時一緒に居た友達が、江雪様の前で粘る私を散々呼んで急かしたから」
「でも、要は博物館に来た客の一人でしょう? 流石に兄さまでも覚えていませんよ」
「……なら、良いんだけど……」
(あの時、呼ばれた様な気がするんだよなあ……)
 無意識に審神者の目線が宗三の手首へと移動した。白い腕は細いが、血管が浮き出ていて宗三の身体も一応男である事を感じさせる。
 宗三もその視線に気が付いた。
「……どうぞ」
「わーい」
 棒読みでそう言うと審神者は差し出された宗三の腕を撫ぜる。
「ほんっっっと肌スベスベだよね!」
 極上の肌触りの膚を持つ上にベタベタ触っても怒らない宗三が近侍の日は、フェチの審神者には至福の時間である。
「ふふ……加州よりもずっと綺麗でしょう? 脚も触りますか?」
「是非!」
 言っておくが、決してこの二人は恋仲とか体の関係とかそういう怪しい仲ではない。単に男体を愉しみたい審神者と、自分の美しさを見せびらかしたい宗三の需要と供給が一致しているだけだ。

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