宇宙混沌
Eyecatch

第7章:愛されキャラ [3/6]

「あとねー、部屋何処が良い?」
 着替えを入れていた手提げの底から、赤いカバーの付いたタブレットを取り出す。水をなんとか飲んで横になった鶴丸に、この本丸の見取り図を見せた。
「部屋数には余裕あるから一人部屋あげるよ。六畳間だけど」
 この本丸、審神者の希望で間続きの部屋を減らし、間に廊下を挟んだ造りにしてもらっている。騒音対策や空調の省エネ等の為だが、その分本来八畳間である部屋が小さくなっているのだ。政府とコネがあると色々と融通がきいて有り難い。
「お、いいねえ。好きな部屋選んで良いのか?」
「名前が書いてない所な。家具はお前の体調次第だが、昼から買いに行こう」
 鶴丸はタブレットを受け取り、空いている部屋を物色する。ふと、「左文字」という文字列が目に留まった。左文字は間続きの二間を専有しており、廊下を挟んだ反対側の部屋は片方がまだ空室になっていた。
「此処が良いな。にっかり青江の隣」
「ん」
 審神者はタブレットを返してもらうと、指定されたそこに鶴丸の名を入力する。
「鶴丸……鶴丸か……どうしてもエンの所のを思い出すな」
「他所に居る俺か」
「区別する為に国永呼びで良い?」
「俺は何でも良いぞ」
「では私は驚き殿下とお呼び致しましょうか」
「白鳥丸……」
「え、待て、いちと大倶利伽羅はいつも通り呼べよ」
「冗談ですよ」
 一期はもう一杯飲ませようと水を注ぐ。鶴丸は従って身を起こした。
「上着を脱いだだけじゃまだ厚着だろう。もっと脱いだ方が……」
 コップを一期に返したタイミングで審神者がそう言い、鶴丸に手を伸ばしたが、微笑んだ一期の腕がそれを阻む。大倶利伽羅もいつでも抜刀出来る構えを取っていた。
「なんだなんだ怖いじゃないか」
「無知な鶴丸殿に変な事をなさろうとする主の方が怖いですよ」
「鶴丸を汚して良いのは返り血だけだ……」
 二人共目が笑っていない。審神者は殺気を感じて大人しく退いた。
 光忠はその様子をソファーに座って笑いながら見ていた。
(伽羅ちゃん、嬉しそうだな)
 自分の知らない誰かと仲が良さそうにしているのは、ほんの少し寂しいけれど。
「おっと、もうこんな時間か」
 ふと置時計が目に入った光忠は、昼食の準備をしなければと立ち上がる。
「国永は初めての食事だから、消化が良くて刺激の少ない物にしてやってくれ」
「骨喰が粥を作れるでしょう。鯰尾が寝込んでいる間、作ってやっていたみたいですから」
 一期はそう言うと光忠と共に部屋を出る。審神者も色々説明すべき事はあるが、まずは体調を整えてからだな、と戻る事にした。
「伽羅ちゃん、エアコンはつけっ放しで良いから」
「私は午後から出陣ですので、また夕刻、お会いしましょう、鶴丸殿」
 三人が出て行った後、大倶利伽羅がぽつりと呟く。
「一期一振……兄弟以外にも過保護な奴だったのか……」
「んー? 何か言ったか?」
「別に……」
 鶴丸が可愛くて仕方無いのは、大倶利伽羅も同じだったりする。

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