宇宙混沌
Eyecatch

第4章:彼の部屋 [2/6]

彼の部屋

「江雪」
 審神者が廊下をパタパタと駆けて来て、私の部屋の障子を開けた。手慰みに写経をしていた手を止め、顔を上げる。
「どうかなさいましたか?」
「他の者は何処だ? 誰も居ないんだが」
「心配は無用です」
 不安そうに部屋に入って来た審神者を手招きする。隣にちょこんと腰を下ろした審神者を、間髪入れずに押し倒した。
「へっ?」
「此処には、私と貴方しか居ません。私の世界ですから」
 審神者の表情がみるみる内に絶望へと変わる。「神隠し」、と殆ど聞こえない声で言った。
「そうです」
 私は審神者の耳に口を寄せた。唇が触れそうな近さで囁く。
「これで思う存分、貴方の名をお呼びする事が出来ます」
 不思議と審神者は抵抗しない。隠されてしまった今となれば、何をしても無駄と承知しているのか。
 私はその名を口にした。
「コウ……」
 私だけの世界で、私だけの為にその色を咲かせて。

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