宇宙混沌
Eyecatch

第5章:厨にて [4/8]

「終わりましたよ」
 江雪は敵を撃退し、執務室に戦果を報告しに行った。
「お疲れ様です」
 しかし、出迎えてくれたのは審神者ではなく、一期一振だった。江雪は狼狽える。
「主は……?」
「現世にお戻りになられています」
「そうですか」
 とりあえず一期に己が誉を取った事を報告し、手入部屋へと向かう。江雪自身は無傷だが、誉欲しさに無茶をした清光が怪我をしたのだ。
「主は留守にしているようですよ」
「ええ? マジかよ」
 左腕を負傷した清光は、安定の手を借りながら服を脱いでいた。
 手入部屋では、二種類の修理を行う事が出来る。一つは、付喪神が宿っている、刀身のレプリカ(とはいえ真剣)の修復。これは審神者の霊力頼みなので、審神者が不在では出来ないが、幸いにも今回清光の刀身は無事だ。
 もう一つは、付喪神が自身の刀身を操る為の傀儡、人の形をした肉体の修復だ。
「まあ、汚い姿見られなくて済むか」
 上半身裸になった清光は、江雪が引っ張り出してきた水槽に、少し青く色付いた液体が満たされていくのを眺める。液体は壁から伸びるチューブから流れ出てきていた。
 審神者曰く、現世の技術では怪我を治す時は基本的にこの液体に患部を漬けるのだという。
「俺、これ嫌いなんだよなー」
 言いながらも清光は左腕を水槽の中に。少しピリピリとした感覚が負傷した箇所を包み込む。
「これ、洗濯しとくよ」
「頼む」
 安定が清光の服を持って出て行った。江雪はチューブの弁を閉め、同じく退室しようとしたが、呼び留められた。
「あんた、現世に行った事ないよね」
「……それが何か?」
「じゃあ主に変な虫が纏わり付いてるのも知らないんだ」
「虫……ですか……」
「帰りが遅いのはその所為だったりして」
 てか、そもそもそいつに合う為に戻ってたりして? と清光は江雪を挑発する。そうする事で清光が有利になる訳ではないのだが、江雪の預かり知らない事をひけらかすだけでも少しはストレス発散になる。
「……だから、どうしたというのですか」
 江雪はこれ以上の事は聴くまい、と障子を開けて出て行った。

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