宇宙混沌
Eyecatch

第5章:厨にて [3/8]

「……そろそろ昼飯食べないか?」
 午後二時。前田と鶴丸は政府の建物のロビーで待っていた。
 美術館は一通り見てしまった。万屋はいつもと代わり映えしない。それに今日は暑いので、外を宛ても無くぶらぶら散歩する気にもなれない。
 前田は二人の仕事が終わるか一区切りついた時に一緒に昼食を摂りたかったが、これ以上鶴丸を待たせておくのも忍びない。前田自身の腹もさっきから何度も鳴いている。
「そうですね……そうしましょう」

「コウちゃん」
 黒背景にしたテキストエディタに食らいつくように画面を見ていたコウを、エンが呼んだ。刀剣の前でなければ、呼び慣れた本名を口にしても問題無い。
「もう三時だ。何か買って来よう」
 エンはブルーライトカットグラスを外して胸ポケットに差し込む。首に提げられた職員証には「穂村」という名が印字されていた。
「先に行ってて。パッチもうちょっとで出来そうだから」
 結局不具合はハード側の問題ではなく、特定のパターンで出陣した場合に起こるプログラム側の問題[バグ]だと判明した。あとは修正パッチを完成させて、転送装置が休止状態の拠点から順に当てていくだけだ。
(一つの拠点当たり確認作業含めて三分で作業するとして……百拠点、休憩無しでも五時間か……)
 穂村や他の作業員と並行して作業しても、実際にはその何倍もの拠点があるし、休憩や使用中の装置の待機時間も必要だし、夕飯時には間に合わないか。
(……こういう手先だけの作業も、嫌いじゃないんだけどな)
 慣れてしまえば単純な仕事だが、慣れるまでには相当の知識や技術を必要とする。その事は他者にも認められ、こうやって仕事も報奨も貰えているじゃないか。
(けどなあ……)
 これをやりたかった訳じゃない。
(……流石に江雪様達の方が先に戻るな……もう帰ってるか?)
 今更気にしても仕方が無い時間を気にしながら、コウはパッチの最後のテストを行った。

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