宇宙混沌
Eyecatch

第5章:厨にて [2/8]

現世

「ふーかぁー」
 現世。転送装置が並ぶホールを出てすぐ、コウは高い男の声を聞いた。
「風花! 呼び出されたんだろ? 一緒に行こう」
 お伴の前田が心配そうに尋ねた。
「呼ばれている様ですが」
 風花というのはコウのハンドルネームだ。刀剣達に真名は教えられないが、演練の時などに審神者同士で呼び合ったり、政府が審神者を区別したりする為に必要なので、審神者になる時に適当に決めた名前。
「構わんほっとけ」
 人混みの中を前田と逸れない様に進む。
「わっ!」
「わっ!?」
 突然物陰から二人の目の前に現れた白い姿に、前田は驚いて審神者にしがみついた。直ぐに、自分は護衛だったと思い出し、真っ赤になりながら手を離して姿勢を正す。
「ははっ、風花殿は相変わらず驚いてくれないな」
 鶴丸国永、という刀剣だった。後ろからしつこくコウを呼んでいた声が、立ち止まっている間に近付いて来る。
「無視しなくても良いじゃん……」
 呼んでいた男は、鶴丸の服に負けず劣らず白い肌の、虚弱そうな青年だった。鶴丸は笑いながら彼の隣へ。
「言っただろ? 追って駄目なら待ってみろって」
「ああ、うん、引き留めてくれてありがとう……」
 この鶴丸は彼が喚び寄せたものだ。コウはちょっと走っただけで息が上がっている彼を見下ろす。
「何で私が呼び出されないといけないのよ。教授[ボス]は?」
「先週から海外の研究会だって。とにかく、行こう」
 彼はコウの大学の同期だ。
 今朝の急な出陣依頼は、転送装置の不具合で本来出撃する筈だった部隊が行けなくなったからだった。そこで不具合の原因を探る為に、設計者達が呼び出されたという訳である。
「私なんか代わりに部隊出せって言われたんだけど、何の当てつけ?」
「頼りにされてるだけでしょ? ……ああ、それで清光君じゃないんだ」
 いつもと違う近侍に彼は笑いかける。前田は礼をした。
「前田藤四郎と申します」
「僕はエン。よろしくね」
 四人は開発課を目指していたが、コウがある事に気付く。
「流石に刀剣は連れて行けないだろ。職員証、本名だし」
「確かに」
 審神者になってからメンテナンスの為に呼び出されたのは初めてだったので失念していた。二人はそれぞれの近侍に小遣いを渡し、適当に遊んでおけと言い渡す。
「博物館に行けば知ってる奴が居ると思うよ。向こうはあんた達を知らないけど」
「お腹が減ったら食事は摂りなよ。僕達の事は気にしなくて良いから」
 刀剣達と別れ、二人は開発課へ。それぞれの職員証を取り出し、電子キーを認証させて中へ入る。
「さて……今日中に何とかなると良いね」
「阿呆。何とかなるじゃなくて、何とかするんだよ」

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