宇宙混沌
Eyecatch

第6章:鯰尾藤四郎は歪みない


「にっかり君は?」
 翌日、今日から遠征の光忠の部隊は、出発時刻になっても青江が姿を現さない事を訝しんだ。そういえば、朝餉の席にも居なかった様な。
「あるじさまからのでんごんです」
 そこに今剣が走ってくる。彼等の部隊は出陣だ。
「にっかりさんはぐあいがわるいので、ごにんでいってきてください」
 お先にどうぞ、と言われ、光忠達は転送装置へ。鶴丸が光忠を小突くと、光忠は苦笑を返した。
「ああ、先を越されてしまったみたいだね」

 石切丸は審神者に呼び出され、彼の部屋から青江を引き取った。
 青江は石切丸の顔を見て少し微笑んたが、まだ身体は言う事を聞かないらしい。石切丸に支えられた胴と脚以外の部分はぐったりと垂れ下がっていた。
 石切丸と審神者は、互いに何も言わない。審神者は障子を閉め、石切丸は青江を彼の部屋に連れ戻った。
「凄かったよ、彼」
 青江が逆さまに垂れた頭で笑う。石切丸は彼を抱え直した。
「どうしてあんなになっちゃったんだろうねえ、君なら解るかい?」
「生まれつきだろうね。彼は世が世なら、新しい宗教を作ったりその崇拝対象となるべき人物だよ」
 青江を一旦畳の上に置いてから、急いで布団の準備をする。
「そうじゃなければ、相手の力……能力を食べてしまう体質なんだろう。神様というよりは物の怪に近いかな?」
「ふうん」
「何にせよ、触らぬ神に祟り無し、さ。私と太郎太刀は、あの審神者や他の刀剣とはできるだけ関わらない様にしているけど、別に嫌いとかそういう訳じゃないからね」
「解ってるよ。主だって承知さ」
 審神者の強い神力に当てられ、重くなった身体を石切丸が優しく布団の上に横たえる。口付けを求めると「冗談は止してくれ」とあしらわれた。
「僕が君以外の力を肩代わりした事に怒っているのかい?」
 あの力には限りが無い。暴走すれば宿り主の肉体さえ毒してしまう。そうならない様に、定期的に他の物や者に力を移動させる必要があった。特に、人間の肉体はこの力への耐性が弱い。石切丸は、半分妖刀であり傀儡も特注品で頑丈な青江と今剣に力を移していた。
「まさか」
 石切丸は仕事に戻る。青江は薄暗い天井を見上げ、呟いた。
「まあ、僕等の肉体は幾らでも替えが利くしねえ」
 この不自由からも、時が経ち力が散逸すれば解放される。
 身体が一つしかない審神者はさぞ辛かろう。

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