宇宙混沌
Eyecatch

第2章:記憶


(…主にバレるのも時間の問題かな…)
 昼食後、安定は自室の畳に寝そべって延々と考え事をしていた。青江は口外する気は無さそうだが、青江に騒ぎが聞こえたなら短刀達の中にも気付いた者が居るかもしれないし、清光だって血に汚れた安定を目撃している。
 この事を知ったら主はどう思うだろう。怖がる? 刀解されるかな? 良くない考えばかり浮かんで頭の中をぐるぐると流れる。途中で和泉守が手合わせに誘ってきたが、とても集中できそうにないので断った。
「ただいまー。つーかーれーたー」
 夕方、障子が開いて清光が戻って来た。襟巻きを取って自分のスペースで何やらごそごそしている。
「お疲れ。政府は何て?」
「知らねーよ。まあ、何か考えてはくれんじゃない? それより、近侍お前に交替」
「え?」
 安定は這って行き、衝立の影から清光の方を覗き込む。清光は風呂に入る用意をしていた。朝にも入ってなかったか?
「主が呼んでる」
 清光に言われて行ってみると、主はにこにこと安定を迎え入れる。現世から帰って来たばかりの主は、いつも、いつもよりも元気そうだった。
「こうするの久し振りじゃない?」
 求められて彼女を抱き抱える様に座る。彼女の髪からは現世の匂いがした。
「ついこの前もしてたよ」
「でもちょっと居なかったでしょ? はい、お土産」
 主は机に広げていた品々の中から一つを選んで安定に手渡す。何やら菓子の様だ。
「清光が妬くよ」
「? 清光にはマニキュア買ってあげたよ?」
 背中側から腕を回しているので、彼女の前で袋を開ける。物欲しそうにするので最初の一つは主の口の中に放り込み、二つ目を自分の口へ。見た目の割に甘くなかった。
「…どうしたの? 元気無い?」
 主が顔を上げて安定の瞳を覗き込む。安定は習慣付いてしまった口付けを浴びせてから答える。
「そんな事無いよ」
 よくもまあこんな嘘が言えたものだ。と自分に感心する間も無く、誰かの気配を感じて主から離れる。大倶利伽羅だった。
「戻ってきたのか。大坂は?」
「安心しろ。勝った」
 倶利伽羅は相変わらずの仏頂面だ。だが、上手くは言えないが何か変だ。
「鯰尾は?」
 主が尋ねた。そうだ、いつもなら隊長の鯰尾が戦果を報告しに来る。彼はどうしたのだろう。
 早々に立ち去ろうとしていた倶利伽羅が振り返る。
「手入れ部屋だ。だが、放っておけ」

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