鯰尾は腰の脇差の鞘を強く握り締めた。
戦火に包まれた大坂城。此処で自分達が歴史修正主義者達の邪魔をしなければ…。
「兄弟」
その心を見透かした様に後ろから骨喰が呼び掛ける。
「行こう」
鯰尾は兄弟の顔を、今日選んで連れて来た仲間を振り返る。
鯰尾が再び前を向いた時、骨喰が敵へ向かって走り出した。
「斬りだ!!」
鞘から刀身を抜き、鯰尾も後に続く。
「そこだ!」
骨喰のサポートをする様に彼の死角へ回り込む敵の刀剣を破壊する。更にその背中を狙う者を骨喰の切っ先が屠る。
「うーん、僕達の出番は無さそうだねえ」
光忠が肩を竦めた。倶利伽羅と長谷部は鯰尾の指示も聞かず、勝手に倒せる敵が居ないか探しに行った。まあ、鯰尾の恐々たる表情を見れば、現場の指揮なんていう役割もすっかり頭からすっ飛んでいるみたいだが。
「じゃ、僕達はゆっくり行こうか。五虎退」
「は、はい…」
へっぴり腰の五虎退は光忠の言葉に少し安心した様な表情を見せ、自らの刀身を握り直した。