宇宙混沌
Eyecatch

胸の痛みと恋ときみと [4/5]

「最後まで…って、要は俺の孔と鶴丸さんの竿でどうにかするわけですよね」
「もう少し雰囲気の出る言葉を使えよ。気分が下がる」
「だって…」
 此処は誰も使っていない空き部屋だ。必要最低限の調度品はあり、毎日掃除当番が埃を取っているとはいえ、此処に後ろを慣らせそうな液体など存在しない。そもそも潤滑剤が必要となるプレイはした事がないので、鯰尾はローションだって持っていない。鶴丸が持っているかもしれないが、いずれにせよ部屋に丁子油なり何なりを取りに行ってもらうしかないだろう。
「心配無い。まあ無理にはしないが」
 言いながら鶴丸は鯰尾のズボンを下着ごと引きずり下ろす。鯰尾が履き直そうと両手をそちらにかけた隙に、彼の竿と袋を握った。
「!」
「これで慣らせるだろう」
 散々胸で焦らされた後だ。既に鯰尾は思考を言葉にまとめられない程度に乱れている。中途半端にずらされ脚に纏わりつくジャージを自ら脱ぎ捨てると、腕と脚を鶴丸に絡めて喘ぎ始めた。
「このままイくかい? というか、出してもらわないと困るが」
 先走りを指先に取り、胸に馴染ませれば先程とはまた違った快感が鯰尾を襲う。それに合わせて嬌声も変化し、鶴丸の耳を愉しませた。
 この声を聴いていたい。
 手持ち無沙汰だったのか、鯰尾の手が鶴丸の着物の襟を掴んだ。その拍子に鯰尾の顔をよく見れば、大きな目にはうっすらと涙が浮かんでいて、まるで少女に乱暴を働いている様だという背徳感が沸く。しかしそれすらも呑み込んでしまう程、もっと、という欲情の方が勝っていた。
「可愛いな」
 気付けばそう零していた。まるで試験紙が反応したかの様に、瞬く間に鯰尾が頬を染める。
「んなっ」
 反論しようとした唇を塞ぎ、再び鯰尾を撫でる手に集中した。
 まだ達したくなかったのか、それとも今更恥じ入ったのか。暫く身体をくねらせて昂ぶりを鎮めようとしていた鯰尾がついに精を吐く。鶴丸は手早く着物の前を肌蹴ると、鯰尾の腹に飛び散ったそれをかき集めて孔に塗り込んだ。
「へっ…ちょっ…それ入る気しないんですけど…」
 鶴丸のが見えたのか、上がった息で鯰尾が最後の抵抗を試みる。
「じゃあやめるかい?」
 入り口を解していた指を引き抜くと、「それもやだ」との返答。鯰尾自身も最早何の為に彼に付き合っているのか解らなくなってしまっていた。自分は一度果てたとはいえ、腹に付きそうなほど反り上がっているものを見せられては「あとは一人でやってください」とは言いづらい。それに、案外やればできるもので、鶴丸は既に一本目の指を付け根まで入れる事に成功していた。
「鶴丸さん本当にこれが初めてです? いち兄とか平野とかとやった事ありませんよね?」
「信用無いなあ。素直に俺の器用さを褒めてくれ」
 ああでも少し会話する余裕が出てきた。と思ったのも束の間、指を増やした鶴丸がある場所を弄った時、鯰尾はまた意図せぬ声を上げてしまう。
「なるほど、男も中で感じる場所があるとは聴いた事があったが、此処か」
「あーマジ無理もう無理早くこの調教終わって」
 また先程の繰り返しだ。良い所を見付けた鶴丸は、その周囲で焦らしたり、不意にその場所を突いたり。緩急を付けるのが上手いので、あっという間に鯰尾はまた余裕を無くす。
「この先に何があるの?」
 鶴丸の指が引き抜かれ、太いそれがあてがわれた僅かな間に、鯰尾は誰に訊くでもなくそう漏らした。
 繋がって、果てて、その先に何があるのだろう。この行為に何の意味があるのだろう。鶴丸が自分に恋をした? 自分が恋をしたのは彼じゃない。果たされなかった欲を埋めるだけの作業としては、自分が下に居るのは滑稽な事だ。
「ねえ鶴丸さん、」
「何も無いだろうな」
 太いものが押し入ってくる。鯰尾の抑えた悲鳴が止むのを待って、鶴丸は侵入と返答を再開した。
「それとも何か欲しいのかい?」
 金色の瞳が微笑む。鯰尾は首を横に振った。
 何も手に入れられないし、何が欲しい訳でもない。
 ただ、傍に居て欲しい。自分を見てくれなくても良い。一つだけ願う事は、みっともない自分を見て嗤わない事。
 鯰尾の様子を見ながら鶴丸が動き始める。正直痛く無いと言えば嘘だったが、我慢出来ない程ではないので我慢した。
 自分の横に突かれた腕を握る。鶴丸が首を傾げた。
「俺も恋したかもしれません」

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