暗い狭い空間に閉じ込められる話 [5/5]
「……繋いだ。え、リモート? わかった、俺よりお前がやった方が早いよなそりゃ……」
常に学年トップのタイムをマークしてきた審神者の走りにより、ケーブルはものの五分で調達された。転送装置に審神者のパソコンを繋ぐと、設計者の方からリモートログインの許可が尋ねられる。
「どうだ? ……ソフトじゃなくてハードの問題? そりゃ困ったな、修理に来てもらわねえと」
「修理されるまでどうするんだ? 光忠は?」
大倶利伽羅の心配はハンズフリー会話なので通話相手にも届く。この際緊急事態だから審神者専用の装置でも構わないのではないかと。
「くりちゃん、光忠に連絡取れる?」
「無理だ。すぐ戻って来るつもりで、ジャージで行ったくらいだからな、財布以外は手ぶらだろう」
「おうふ」
「万屋に行ったはずだから、主の転送装置を使って迎えに行けば良い」
「なるほど」
電話の向こうの相手は続けた。故障の原因は修理しないと直らないが、扉を開ける事はできる、と。
「閉じ込め!?」
その可能性には思い至らなかった審神者が慌てる。もう一時間以上も、この中に閉じ込められているかもしれないだと?
「ロックの解除はどうするんだ!?」
慌てる審神者を電話の向こうの主が宥める。何やらリモートでそのまま作業をしているらしい。暫くして、カタン、と金属音が鳴った。
「開いたようだな」
大倶利伽羅が扉に手をかける。今度はすんなりと開いた。
が。
「…………」
「や、やあ、伽羅ちゃん……」
「どうした? って……」
審神者は慌ててパソコンを持って脇へどいた。会話の相手は女性なのだ。この光景を見せたらセクハラになる、と咄嗟にパソコンのカメラを手で塞いだが、今はビデオ通話ではなくスマホだったと思い出す。
どうやら大倶利伽羅が扉を開けるその時まで、外界の動きに気付かなかったらしい。光忠はともかく、鶯丸はいわゆるあられもない姿で寝転んでいた。
「……邪魔したな」
この本丸で色々ありすぎて、異様に高いスルースキルを持った大倶利伽羅はそっと扉を閉める。
「あっ待って伽羅ちゃん! 誤解だ! 主も!!」
「何が誤解だ」
鶯丸は服を整えながら、クックッと面白そうな音を出している。
「ともあれ、出られて良かった」
閉めたら窒息するだろ、と審神者が様子を窺いつつまた開けてくれた。基本的に他人の情事には干渉しない主義の本丸なので、特にお咎めなども無く解放される。
「しかし中途半端な所で止められてしまったな」
鶯丸はそう言ったが、光忠はすっかり萎えている。肉の事も忘れて台所に戻ろうとする彼に、鶯丸は肩を竦めた。
「まあ、いつでも俺の部屋に来ると良い。あそこほどではないが、二人きりにはなれるだろう」
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