宇宙混沌
Eyecatch

第2章:愛され系審神者は給料分は仕事をする


 ……誰です?
 この私を、扱えるとでも言うのですか?

「一期」
 審神者が振り返った。彼の前には、既に形の出来上がった刀身が光を発している。
「太郎太刀だ。傀儡送ってもらってくれ」
 一期は急いで操作パネルをタッチし、政府に太郎太刀用のクローン人形を送るよう要請する。間もなく、転送装置から棺桶の様な箱がせり出してきた。
(凄い……初めての鍛刀で望み通りの、ましてや大太刀を喚び寄せるなんて)
 前の審神者が石切丸を喚ぶのにどれ程苦労していたか。唾を飲み込む一期の隣で手早く儀式を完了させ、目を覚ました太郎太刀を示しながら、審神者は一期に勝ち誇った笑みを見せる。
 その顔が美しいという言葉の範疇を越えていて。
(……! いけません)
 人間に惚れ込んだ先に待ち受ける結末を、自分は見たじゃないか。
(けれど……)
 審神者は太郎太刀の手を引っ張って、棺桶の中から立ち上がらせようとしている。その細い手を握る大きな手に、嫉妬している自分が居た。
「でっか」
 立ち上がった太郎太刀を見た審神者の感想はそれに尽きた。審神者自身、平均より十センチ以上高いのだが、彼はそれよりも更に十センチ以上背が高い。
「つーかこれ持ってくれ」
 審神者はそれまで支えていた太郎太刀の刀身を本人に渡す。これで主従関係の契約は完了だ。
「果たして貴方に私が扱えるでしょうか」
 そう言う太郎太刀に審神者は安心する。
(こいつは神様ぶって人間に興味無い奴だな……)
「ていうか、明らかに投入した鋼より刀の方が体積でかいんだけど、質量保存の法則はどうなってんだよ」
「私に訊かれましても……」
 困って苦笑する一期に対し、太郎太刀は
「その様に細かき事は、気にせずとも刀は振るえます」
と真正面から審神者に喧嘩を売った。
「……こちとら現世では数式に身を捧げてるんでね、覆されると困るんだが」
「おや? ですが力の源と質量は等価、という法則もあるそうですね。霊力も力の一種ですから何も矛盾していないのでは?」
「太郎ちゃん詳しいね……」
 しかしこれで調子に乗った審神者、再び鍛刀しようとして一期が制止する。
「ご無理はなさらないでください」
「別に無理してねえよ。有り余ってるから、寧ろ削りてえくらいだ」
 そして数分後。
「綺麗な次郎で~す! あれ? 兄貴じゃん」
「おや、次郎も来ましたか……」
(二連続で同じ日に大太刀……このお方の霊力は無尽蔵ですか!?)
(なんか変なの来た……まあこいつも神隠しとかするタイプじゃなさそうだな)
 ともあれ、とりあえず今日の鍛刀はここまでにしよう。

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