宇宙混沌
Eyecatch

第2章:愛され系審神者は給料分は仕事をする [3/5]

「しまった……今日かしゅー遠征なんだった……」
 審神者はキュルキュル鳴る腹を叩きながら、執務室の天井を見上げていた。
(食堂行くしかねえか……)
 しかし、既に丸二日、一度も皆とは共に食事をしていない。今更馴染める気もしないし、馴染むつもりも無かった。
(さっきずんだ餅食ったし、奴等が捌けてから行くか……)
 そう決めて再び仕事をしていると、障子に人影が映った。
(一期一振……)
「主、昼餉をお持ちしました」
「置いといてくれ」
 殊、こいつには気に入られてしまった事に勘付いている審神者は警戒する。指示通り、一期は盆を縁側に置いたが、一向に去る気配が無い。
「……お前がそこに居る限り、俺は障子を開けないからな」
「大倶利伽羅や清光の時は、開けていらっしゃるではありませんか」
 先程の様子を見ていたらしい。気を許すつもりは無いが、機嫌を損ね過ぎて暴れられても怖い。審神者は札を取った。
「サンキュ」
「近侍も付けずに、お一人では大変では?」
 盆を引っ込めて閉めようとした障子を、一期の手が止める。
「……俺は前の審神者より優秀なんでね」
「そんな事を仰らずに。事情は清光から聞きました。何も取って食いやしませんよ」
(その悪意無さそうな笑顔が一番怖いっつってんだよ)
 と、神隠し経験者は語る。
「特に……此処では神隠しがあったばかりですから」
 一期は言って視線を下げる。では、と去ろうとした彼を、審神者の方から引き留めた。
「今日かしゅー居ないからさあ」
 一期は驚いて金色の目を丸くした。審神者の端正な顔立ちを見詰める。
「鍛刀したいんだけど、失敗すんのやだから手伝ってくんない? 飯食った後で」

「へー此処に傀儡が送られてくんのか」
 鍛刀部屋。政府から刀剣男士の肉体(刀剣の[[rb:写し > レプリカ]]に宿る分霊が操る傀儡)が送られてくる専用転送装置を見て、審神者は感嘆を漏らした。
(なんだ、あいつも結構面白そうな事やってんじゃん。何が不満だったんだか)
「鋼は此方に」
 写しの刀は、鋼から審神者が霊力である程度形成する。同時に審神者が各地の付喪神にコンタクトを取り、最初に応えた刀剣の分霊が召喚されて定着するのだ。
「それから……」
「ん?」
「江雪殿は、まだ、喚ばんでやってください」
 この本丸には、つい一月ほど前まで、江雪左文字が居た。
 しかし、夏の日に起きたある事件によって、江雪左文字はこの本丸から姿を消した。それには左文字の弟刀達が直接関わっており、前の審神者も今後の事を考えて辞職したのだった。
 そして新しい審神者に託された個別案件……それは小夜左文字と宗三左文字の監督と更正だった。
「解ってるよ……大太刀作るにはどれくらい必要なんだ?」
「いきなり大太刀、ですか……」
 まずは太刀や脇差からにしたらどうか、という一期の言葉には耳を貸さない。
「良いから」
(俺は即戦力が欲しいんだよ)
 一期が資材を準備する傍らで、審神者は審神者間で出回っている「喚べそうな刀剣リスト」を見ている。
「次郎太刀、太郎太刀、蛍丸、か……とりあえず太郎太刀からにすっか」
 蛍丸の方が強いらしいが来にくいらしいし、と審神者は袖を捲り、鋼の前に座って召喚の儀を始めた。
(さーて、おいでませ太郎ちゃん)

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