宇宙混沌
Eyecatch

第2章:愛され系審神者は給料分は仕事をする [1/5]

「感じ悪いですね、あの人」
 中庭を挟んで執務室の様子が見える部屋、へし切長谷部の部屋に、宗三左文字は居た。
「この二日間、近侍も指名せずに執務室に籠りっきり」
 ふぅ、と色っぽい溜息をつき、締め切られた障子を見遣る。
「その割には、大事そうにしてるじゃないか」
 長谷部は本を読む視線を上げなかったが、何を指しているかは解った。
 宗三の胸に光る名札。
「貴方こそ」
 長谷部の胸にも同じ物がある。
「主命だからな」
「もう新しい審神者に尻尾を振るんです? ほんと、犬みたい」
「黙れ、圧し斬るぞ」
 長谷部がようやく顔を上げ、宗三を睨んだ。その瞳に映っているのは、宗三が忌み嫌うあの者。
「貴様こそ、兄を失った穴を埋めるつもりなんだろう?」
 宗三は座ったまま、着物を畳に擦りながら凄む長谷部に近付く。それぞれ違う色の瞳が、長谷部の視線を絡め取った。
「貴方が、埋めてくださっても良いんですよ?」
「フン」
 長谷部が宗三の肩を掴み、顔を寄せた。すかさず宗三が淡い色の唇を彼に寄せる。
「そうして欲しいなら最初から言えば良いものを」
「ずんだ餅……」
 良い感じに昂ぶってきた二人の耳に、優しい声が届く。開け放されたままだった障子から、大倶利伽羅が中を覗いていた。
 二人はお互いの服に手をかけたまま微動だにしない。
「……邪魔したな……せめて戸を閉めろ……」
 大倶利伽羅は前審神者時代に培われた華麗なるスルースキルで何事も無かった事にする。大倶利伽羅が通り過ぎてから、ぴしゃっと障子が閉まる音がした。続けるのか。
 大倶利伽羅はお手製のずんだ餅を落とさない様に、二つ隣の自室へ入る。中では小夜と愛染がテーブルを挟んで座っていた。
「待ってたぜ!」
 大倶利伽羅が盆を置くが早いか、愛染は手を伸ばしてそれを頬張る。小夜も手に取ったが、その表情は明るくはなかった。
 三人は、二百年程前に大阪の方で同居していた面子だ。江雪がこの本丸から居なくなり、その原因の一部を作ってしまった左文字の弟達は、周りの刀剣達に見守られつつ励まされつつ過ごしている。尤も、宗三の慰みはあまり褒められたものではないが。
「随分沢山作ったね……」
「他の奴等にも配る」
 大倶利伽羅も腰を下ろした。今日は光忠も鶴丸も出陣しているので、暇潰しに二人を呼んだ所、愛染に餅をせがまれた次第だ。大倶利伽羅は「馴れ合うつもりはない」と言いながらも、知り合いには甘い人見知りタイプである。
「……審神者にも?」
「……審神者にも、だ」
 小夜も審神者の事を誤解しているのか、と大倶利伽羅は少し残念に思う。彼は自分と同じタイプのような気がする大倶利伽羅は、勝手に親近感を抱いていた。
「けど、あいつ部屋に結界張ってんぜ?」
 愛染が二つ目に手を伸ばす。
「あれは簡単に解いたり張ったりできるやつだよ」
 小夜が答える。実際、食堂に足を運ばない審神者の為に、清光が毎回料理を部屋まで運んでいる。
「二人共、あと幾つ食べる?」
 返ってきた数だけ餅を盆から下ろし、大倶利伽羅は乾燥しないうちに配りに行く事にした。

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