宇宙混沌
Eyecatch

第3章:愛され系審神者は根は真面目だ


「という事で新しい仲間でーす。皆仲良くしてあげてくださーい」
「太郎太刀と申します」
「次郎太刀でーす」
 夕餉の席、着任から三日目にして初めて審神者は食堂に姿を現した。清光達も日帰り遠征から戻って来ているが、他にも周知すべき決定事項がある。
「食事の前に皆さんにお知らせがありまーす」
 相変わらずやる気の無い感じを全面に押し出しつつ、持ってきたノートパソコンの画面を読み上げる。
「ひとーつ、出陣頻度を倍にしまーす」
 これには食堂のあちこちから不満や不安の声が上がった。
「おい、テメエまさか、此処をブラック本丸とやらにする気かよ」
 初日も聞こえよがしに悪態をついていた、和泉守兼定が声を荒げる。
「うるせえ! 現状週休三日、働いてる日も仕事は掛け持ちしないで空き時間が半日以上もあるなんてホワイトすぎるんじゃ!」
 審神者や刀剣の給料は歩合制だが、そもそも物欲が少なかった前審神者や此処の刀剣達にはこの様なシフトでも必要十分な稼ぎだったらしい。審神者も刀剣も命を賭けているので、給料の待遇は普通に働くよりもずっと良いのだが、現在金の亡者と化している審神者は更なる高みを目指す。
「それから、たろじろちゃんの部屋は燭台切と安定君の間の二間ね」
「光忠で良いよ」
「じゃあみっちゃん」
 厨から料理を運んで来た光忠は何だか嬉しそうだ。
「以上。何か質問ある?」
 無さそう。では太郎次郎と急遽増やした机で食べるか、とした時、ズボンの裾を誰かに引っ張られた。
「あたらしいあるじさまのとなりでたべたいです」
(いまつる……!)
「じゃあ、私はあっちに移動するね」
 気を利かせた石切丸が腰を上げる。断る暇も無く、審神者は半ば強制的に今剣の隣に座らせられた。
「あるじさまはなんのおりょうりがすきですか?」
「出されたもんは何でも食うよ」
(何を考えてる?)
 返答があるかわからなかったが、口で答えながら念を送ってみる。
 未だ閉心出来ない刀剣達の心の雑音の中、返ってきたのは意外な言葉だった。
(ぼくのれいりょくのおよぶところにいるかぎりはあんぜんです)
 審神者は目を瞬く。
(なるほど)
 確かに、より強い霊力の者の力が及ぶ範囲内に居れば、それよりも弱い力しか持たない者は手出しが出来ない。
(しかし……信用して良いのか?)
 今のは閉心しての独り言だ。守ってくれるだけなら良いのだが、此処に独占欲が組み合わさると神隠しと紙一重となる。
(つか、俺既に誰かに狙われてる訳?)
 今剣にもう一度念を送ってみたが、彼も閉心してしまったらしい。無邪気な笑顔を審神者に向けていた。
「あったかいうちにたべるとおいしいでしょう? あしたからもきてくださいね」
 嗚呼、本当にこの霊力さえ無ければ食事だろうが風呂だろうが褥だろうが共にするのは大歓迎なんだが。

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