宇宙混沌
Eyecatch

第1章:愛され系審神者はオカルトが嫌いだ


 全員の名札を配り終えると、夕餉まで一旦解散となった。聞こえよがしに口で悪態をつきながら散っていく刀剣達の中から、清光は審神者を連れ出す。
「その体質も苦労するね」
 清光は意外にも、憐れみを含んだ優しい眼差しで言葉をかける。
「ま、当然の事を言ったまでだし?」
 実際、戦場で相手に心を読まれては危険だ。日頃から訓練するぞ、という審神者の言い分は何も間違っていない。
 しかしこの審神者には、これとは全く別の問題を抱えていた。
「人ならざるものに愛されるってのも大変だね」
 そう、この審神者、あまりに霊力が強すぎて神や物の怪の類を惹きつけてしまう体質なのだ。神隠しだって幼い頃から何度も遭った事がある(そしてその度に自らの霊力で神域をぶち破って出てきている)。今さっきだって、一期とか大倶利伽羅とかにときめかれたっぽいし、今剣にも目を付けられてしまった気がするし……。
 少し嫌われているくらいの方が、審神者としては安心出来るのだった。こういうオカルトで危険な奴等とは積極的に関わりたいとは思わない。
 世界が数式で全て表される様に出来ていたらどんなに良かったか。科学で説明できない物が見ようとしなくても見えてしまうこの眼を抉り出したかったが、霊視は眼球機能とは全く関係無いので無意味だから、しない。
「あーマジ、いまつるちゃんの霊力弱かったら夜伽してもらっても全然構わないんだけどなー」
「前の主から聞いてたけど、遊び人ってのは本当なんだ」
 清光はそのまま本丸を案内し始めた。
「それも霊力を少しでも減らす為」
「ふーん。でも、結局それが原因で審神者になる事になっちゃったんだから、皮肉だよねー」
「あいつ……」
 べらべらと個人的な事を清光に漏らした、前審神者の知人を恨む。
「此処が食堂ね。あの離れが厨房。転送装置の小屋の向こうにあるのは、前の主が趣味で持ってた格技室ね。道具とかも少しは置いてってくれたから」
「お、じゃあ有難く使わせてもらうとするか。トイレと風呂は?」
「審神者の離れにあるじゃん?」
 前の主はそこ使ってたし……と清光は首を傾げる。
「無理。あの建物無理」
「こんのすけが来るから?」
 こくこくと頷く審神者に、清光が吹き出す。
「なーに可愛い事言ってくれちゃって」
「うっせえ! あいつ傀儡は可愛く作られてるけど、俺には本体(霊体)が見えるんだよ!!」
「あーはいはい。じゃあ母屋に審神者の部屋作らないとね。執務室の隣で良い?」
「おう」
 そして結界を張ろう。とりあえず、今の所は付喪神よりも管狐の方が怖い。少なくとも、刀剣男士の本体は管狐の本体の様に醜く恐ろしくは無いからだ。
 それに、政府から頼まれている案件もある事だし。
「……じゃあさ、俺の本体も見えてるの?」
 母屋の縁側をぐるっと回って解説しながら、ふと、清光が尋ねた。
「俺の本体は、どう? 綺麗?」
 切れ長の目がはにかむ清光を見詰める。
「……綺麗だよ。おっ、此処が執務室か」
 換気の為に開け放されていた部屋に、審神者は逃げ込む。縁側に立ったままの清光の唇から、小さく言葉が漏れた。
「うそつき」

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