宇宙混沌
Eyecatch

第12章:愛され系審神者の愛される所以


「審神者が神域に入ったな」
 鶯丸は手の中の筒を弄んでいた。まだ日付は変わっていない。出雲から神が戻ってくるまで、何時間かかるのだろう。それまで審神者が……特に、自分達分霊をこの世界に繋ぎ留めている力が保てば良いが。
「しっかし、なぁんで上に報告しなかったんだ? 狐に頼らなくても出来るだろ?」
 日本号が問う。鶯丸は、管狐が閉じ込められていた呪具を見詰める。
「さあ」
 日本号は鼻で笑った。鶯丸の気持ちははっきりしている。他の者にも解る程度には。
「ま、あれだけ狐を嫌ってた審神者が、まさか奴を解放してやるとはなあ」
 管から解放された狐は暫く本丸の上を飛び回っていた。別種の結界が取り巻いている事に気付くと、自らの霊力を使って何処かへ瞬間移動してしまったが。
「政府の人に、怒られない?」
 小夜が心配する。
「遣いが居なくなった件に関しては、確かに言い訳を考えとかなきゃなあ……」
 言いながら、日本号達の視線は、鶯丸の手の中の物へ。
「平野、平野や」
「何でしょう?」
 鶯丸が呼べば、緊張した面持ちで出てくる。
「これの傀儡は無事か?」
「恐らく」
「取って来てくれ」
 数分後、筒は再び玩具の中に収められていた。
「これで良いだろう」
「本当か? こいつ仕事できるんだろうなあ?」
「バレたらまたその時考えれば良いさ」

 数時間が過ぎる。これ以上長引くようなら、一旦審神者を神域から出した方が良い。鶯丸がそう判断した時、見張りの鶴丸が叫んだ。
「戻って来た!」
 その様子は皆にも感じられた。エネルギーの塊と言えば良いのだろうか。物凄い力が、この本丸の上空をウロウロしている。
「此処だ」
 鶯丸が傀儡を掲げる。
 空気が変わった。
「……青江!!」
「おっと危ない」
 それは鶯丸の手元ではなく、青江めがけて速度を上げてきた。青江は慌てて石切丸が念の為に張っていた神域まで逃げ込む。力の衝突を畏れたのか、神はそれ以上は追いかけずに再び上昇した。
「やはりな」
「何がだ」
 ニヤリと笑った鶯丸に、鶴丸は問う。
「おかしいと思わないか?」
「だから何が!?」
 今度は今剣を狙ってきた。鶴丸は彼の元まで跳ねて行き、自らの刀身をブンブン振り回して追い払う。まだ神力が暴走していないから、なんとかなりそうではある。
「あれはあそこから動かそうとする度に禍を呼んだ神。しかし審神者に自らを『連れて行け』と唆した神だ」
「なるほどねぇ」
 鶴丸その他がわちゃわちゃと今剣を守ろうとしている様子を見ながら、日本号は呑気に頷く。
「神はあの土地に思い入れがあった。神の支配する領域を狭め、ごくごく限られた狭い祠の中に閉じ込めたのは人間だ」
 こっちに誘導しろ、と声をかける。
「簡単に出来たら苦労しねえぞ! お前も手伝え!」
 助勢していた和泉守が怒鳴るが、動じない。
「自分が居る事を望まれなかった神は、その苦しみを分かち合える者となら、その地を離れても良いと判断した。そうだろう?」
 その言葉が伝わったのか、神力の塊の矛先が変わった。鶯丸の前まで高速で移動し、止まる。
「或いは、自分の存在を望んでくれる者となら」
 鶯丸は傀儡を差し出す。神力は静かに脈打ちながら、動きを止めていた。
「審神者は俺達が隠した。もう、お前と共に在る事を望んではいない」
 悲痛な音がした、気がした。今剣が隙を見て石切丸の元へ。他の者達は固唾を呑んでその様子を見守る。
「だが自由になる身体は此処にある。しかも、俺達はこれを動かしてもらう中身を探している。どうだ? これでは不満か?」

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