主に、初めての事を手伝ってくれと言われた。
「勿論だ」
俺は山姥切国広。名刀・山姥切長義の写しで、今はとある本丸の初期刀兼近侍兼第一部隊隊長だ。俺の主は若い女で、なんだかんだあって俺とは恋仲、という事になっている。
だから、その頼みを聞き入れない理由なんてなかった。
「……まんばちゃん……」
「なんだ?」
俺は自室で主を組み敷いていた。主は俺を見上げ、怯えた表情をしている。
「あの、やっぱ怖いです……」
「俺にして欲しいと言ったのは、あんただろう」
床についた俺の右手の下には、昼間二人で選んで買った例の物が、まだ封を切られない状態で置いてある。指を曲げてパッケージを掴むと、主がびくっと体を強張らせた。
「痛くないようにするから」
「ぜっ、絶対痛いって……」
「あんたが大人しくしてればすぐ済む」
「まんばちゃんだって初めてじゃん!」
「ネットの動画でちゃんと勉強したから大丈夫だ!」
逃げようとする主の腕を掴み、また自分の身体の下に連れ戻す。主は目に薄っすら涙を浮かべた。
「……そんなに嫌ならやめるか? 今しないならいつやる気なんだ」
「そ、そのうち……」
「その内ね……」
俺は精一杯、残念そうな溜息をついてやる。身を起こすと、壁際の箪笥を見た。これでは、当分渡せそうにない。
「……どうせ俺が写しだから、腕を信用出来ないんだろ」
「そ、そんな事ないよ……っ」
慰めようと手を伸ばしてきた主を捕まえ、身動きが取れないように押さえた。再び組み敷く形で、だが今回は両手を使いたいので体重と下半身で主を押さえる。
「や、やだっ、怖い……」
「…………」
密着した身体に、一層恐怖を覚えたらしいが、俺は黙ってパッケージを開ける。中から出てきた物に破損が無いか念入りにチェックした。
「まんばちゃん……」
「あんたはじっとしてれば良い」
言って主の顔に自分の顔を近付けた時、部屋の襖が急に開いた。