宇宙混沌
Eyecatch

匂いフェチの光忠が忍び込む話 [4/4]

「っ!?」
 思わず息をのんだ音に、相手が警戒して腰の刀に手を伸ばす。
「泥棒か?」
 この部屋の持ち主、鶯丸だった。そりゃこの状況を見れば泥棒に見えるだろう。が、現実はもっと深刻である。
「あ……えっと……」
 なんて言い訳すれば良いのだろう。どんな理由であろうとこんな夜更けに他人の部屋に忍び込む理由にはならない。ましてや布団に顔を埋めて己を慰めているなんて。
 結局、逆に質問する。
「鶯さん、遠征は……?」
「燭台切か。早く終わったんで帰ってきた。向こうに居ても野宿だしな」
 鶯丸はそれ以上特に追求する事も無く、障子を閉めて光忠の傍へ。光忠が首を傾げていると、腰を屈めて耳元で囁いた。
「この前の続きがしたくなったか」
 光忠がカァッと耳まで赤くなる。この前の仕返しとばかりに、今度は鶯の方から口を寄せてきた。
 一つ、二つとパジャマの前ボタンが外されていく。光忠は、敵わないなと思った。
 どれだけ着飾っても、服を脱がされれば意味をなさない。自分は一介の長船。貴い方々に見出された彼とは違うのだ。
 気付けば一糸まとわぬ姿で転がされていた。馬乗りになった鶯丸が、眼帯に手を伸ばす。光忠は自ら、後ろの留め金を外した。
「ほう」
 現れたのは、赤い目。
「独眼ではなかったか」
「オッドアイ、好きじゃなくて」
「その色の目は霊力緩和装置になっている筈だ」
 今剣やにっかり青江と同じ瞳。それは持ち主や周囲の霊力によって人間の肉体がダメージを受けない様に守っている。
「どうしてお前に?」
「さあねえ」
 鶯丸は笑った。本当はそんな事はどうでも良くて、勝手に部屋に入った事を怒っていないと伝えてくれたのだろう。
 光忠は瞼を閉じる。普段隠れている方の目の上に、柔らかい感触が降りてきた。
 布団なんかよりも強烈な、記憶にこびりつく香りがした。

闇背負ってるイケメンに目が無い。