宇宙混沌
Eyecatch

第11章:一期一振は唯一の存在にして


「御神体と、それに宿っていた神は……神力は何処に行ったと思う?」
 一期は恐る恐る、口を開いた。頭の中で繋がった点と点を結ぶ線には確信がある。しかし、それはつまり。
「主は……主が祠を荒らして御神体を持ち去った……?」
「可能性は高い」
 審神者を悪者にはしたくないのだろう。認めたくなさそうに髪の毛をくしゃっと掴んだ旧知に、鶯丸は言葉をかける。
「もしかしたらその神に唆されてやったのかもしれない。幼さ故の過ちでもあるだろう」
「ええ……」
「政府は、審神者の神力は元はその神のものだったと考えている。二日後に見つかった時、審神者は何も持っていなかったが、身体に文様の様な痣が増えていた」
「文様?」
「審神者が札に書いているあれだ。密教か何かのものだろう。それも数日後には消えたらしいが」
 鶯丸がタブレットを寄越す様に手で示す。渡すと、当時警察が捜査資料として記録したと思われる、審神者の背中の写真を出して此方に向けた。
「審神者は神と契約して自らが御神体となったのだ。もう解るだろう?」
 一期は幼子の様にこくり、と頷いた。
「代わりの御神体を準備し、主を隠しておけば、戻って来た神がそちらに移ってくれるかもしれない、という事ですな」
「ああ、そうだ。まあ、先にこの推測が正しいか、審神者を問い詰める必要があるが……」
 鶯丸はページを繰る。次に見せられたページに、一期は息を呑んだ。
「これは……!」
「審神者の真名だ。隠す役目は、一期に任せる」
 一期は逡巡した。しかし結局、自分以外の誰が適任かも分からなかったので、頷くしかない。
「もう一つだけ、お訊きしたい事がございます」
「何だ?」
 部屋を辞する前、一期は立ち止まる。
「主は自分に神力への耐性がある事を疑問に思っていらした。それについては、何かご存知でしょうか?」
「さあな」
 しらを切る鶯丸に、一期は期待する。その通りに、彼の言葉には続きがあった。
「ただ単に、審神者がまだ神の手の内に居るというだけじゃないか?」
「と、言いますと?」
「西洋の物語にも良くあるが……呪いは愛し愛される者の口付けで解ける、とかな」

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