宇宙混沌
Eyecatch

第11章:一期一振は唯一の存在にして


「……っ!?」
 審神者は離れの布団の上で跳び起きた。パジャマは汗びっしょりで、薄明かりの中浮かび上がる調度品に、夢から覚醒したのだと気付く。
(嫌なもの思い出した……)
 よろよろと立ち上がって審神者専用の風呂へ。お湯が出るまで待つのが面倒で、水のままシャワーを浴びた。寒いが目は冴えた。
 今は出雲だが、審神者に神力を与えた神。正確に言えば、それは契約だった。審神者は自ら神体となる事で、祠の中に封じ込められていた神を運び、神は代わりに彼に様々なものを与えた。美貌、頭脳、肉体……審神者がそれらを輝かせる努力をした甲斐もあって、どれも素晴らしい。
 だが、その契約は短い内に終わる筈だった。人間の成体は神力への耐性が無い。それまでに別の身体へ移ってもらわなければ、死がその契約を終わらせる予定だった。尤も、その事を審神者が知ったのは、ずっと後になってだが。
 そしてそのままズルズルと、二十年も一緒に居る訳である。時々暴走さえしなければ一生仲良くやっていけそうではあるが、実際暴走するし、神力やその恩恵目当てに他の変な奴等が寄ってくるのはもううんざりだ。
(うんざりだよ……)
 新しいシャツを着込んで寝室に戻る。本当の願いに見て見ぬふりをしながら。

「此処の審神者は、計画の初期段階から政府に目を付けられていてな。技術者としても審神者としても」
 鶯丸は言って、鍵のかかった箪笥の引き出しからタブレットを取り出した。資料を一期に見せる。
「最悪周りから囲って協力してもらうつもりだった。だが」
 綺麗な指がページを繰る。ある所で止まった。
「経歴を調べていたら、実父に犯罪歴があった」
 読め、と机の上に置いていたそれを持ち上げる。
「拝見致します」
 それは審神者の周囲で起こった事件簿[ケースファイル]だった。
 父親の逮捕、両親の離婚と度重なる引っ越し、そして……。
「二日間の空白期間」
 鶯丸が頷く。
「最初の神隠しだ。この時、審神者は二日後に自らの足で自宅まで戻って来た。同時に」
 一期は緑色の目を見詰めて続きを待つ。
「自宅付近の祠が荒らされている事件が起こっている。犯人は未だに判っていない。しかし」
「しかし?」
「この事件の後、移動させようとすると必ず災いを引き起こしていたこの祠が、いとも簡単に取り壊された。何故なら」
 一期は唾を飲み込む。鶯丸は茶を勧めたが、断った。
「何故なら、御神体が盗まれていたからだ」

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