「いまです!」
甲高い声が叫んだ。主を褥に連れて行こうとしていた安定と清光を含め、全員が声の出所を振り向く。
いつの間にか現れていた、今剣だった。
「…お別れなんだね」
腕を開いて無防備な体勢を取ったその背中に、小夜が駆け寄って自らの刀身を深々と突き刺す。今剣は一瞬、微笑みを浮かべたかと思う間もなく霧散した。
「小夜左文字、何をする!?」
近くに居たへし切長谷部が刀を抜いて小夜に斬りかかる。その切っ先を、飛び出してきた宗三の刀身が受け止めた。
「どけ、宗三!」
「嫌です」
「小夜は仲間を刺したんだぞ!?」
「今剣にそう頼まれていたからですよ」
「聴いてたの?」
肩で息をして黙っていた小夜が顔を上げる。今剣が防御を解いているとはいえ、小夜の霊力では彼を破壊するには全力を出さねばならなかったのだ。
「…どういう事か説明してもらおうか」
長谷部は刀を引いた。小夜はこめかみを伝う汗を拭って頷く。
「残された時間は少ない」
小夜は動きを止めていた清光達に近付き、主の手を取った。意識はあったのか、主は目を開く。
「小夜ちゃん…私が説明する…」
「寝てなよ。僕の想像が、間違っている時だけ訂正して」
主は微笑んだ。褥に寝かされ、天井を見上げる。
歴史が修正される前の事を思い出しながら、主は小夜の落ち着いた説明を聴いていた。