宇宙混沌
Eyecatch

第1章:あのこはだあれ、わたしはだあれ [3/4]

 翌日、もろはと竹千代は共に仕事を熟しに行く。道中出会った雑魚妖怪は、人間の姿に変化した竹千代が刀で屠った。
「たぁ!」
「へー、お前の太刀筋、結構ちゃんとしてんじゃん」
「当たり前だぞ。俺は……」
 もろはは続きを待ったが、竹千代はそのまま目的地へ踵を返す。
「そんなことより急ぐんだぞ」
「なんで?」
「俺の変化は一刻しか保たないからな」
「変化が解けたらどうなるんだ?」
「戦えない。背丈より長い刀は、抜くことも出来ないんだぞ」
「それって時間切れしたらアタシ一人でなんとかしろってこと?」
「そうなる」
 もろはは口角を下げる。
(そういう大事なことは早く言えよ! っていうか、それならこんな雑魚相手に変化使うなよ!)
 とはいえ、首の持ち帰り方などの指南は受ける必要がある。それに、時間切れが問題なのはもろはの方が深刻だ。もろはは渋々竹千代を追った。
「あいつだ」
 賞金首は他の小妖怪達を追いかけて捕まえては、手足をもぎ取って食い散らかしていた。
「うわ……」
「同じ妖怪とは思いたくない類の者だな」
 竹千代は呟いて、もろはと物陰で作戦を立てる。
「小妖怪にも気を付けろ。あれは小さいが人喰い妖怪なんだぞ」
「知ってる。……そういや、お前は人間は食わないのか?」
「食ったことはない。人間の肉は、あらゆる生き物の中でもかなり不味い方と聞いたことがあるんだぞ」
(やっぱり竹千代も妖怪なんだな)
 その答え方に、もろはは壁を感じる。
「沢山居るし弱いから、食う物に困れば食う妖怪が多いのだろうな。僧なんかは比較的美味い上に、霊力を取り込める事もあるんだぞ」
「ふぅん。で、アタシはどうすりゃ良いんだ?」
「今回は一応、お前が与えられた仕事だからな。俺はお前が困ったら、周りの小妖怪くらいなら倒してやるんだぞ」
「んじゃ、早速突っ込んで良いってことだな」
 竹千代が頷くと、もろはは正面切って賞金首に挑んでいく。
(あの馬鹿、せっかく気付かれてないんだから奇襲するとか頭を――)
「散魂鉄爪!!」
 竹千代の心の中に浮かび上がった悪態は、華々しく散る小妖怪達の血飛沫に掻き消された。
「紅龍破ァ!」
 賞金首はもろはの刀から出た炎の龍に巻かれ、息絶える。もろはは刀を納めると、手を叩いて竹千代を振り返った。
「こんなもんでどう?」
 竹千代は言葉が出なかった。
(強すぎるんだぞ)
 竹千代は妖狸の名家・狸平の若君として、幼い頃から武芸を叩き込まれてきた。人間に変化していれば決して弱い方ではない。今回獣兵衛が与えた仕事は、そんな竹千代でも一人では厳しく、てっきり力を合わせてどうにかしろという意味だと思っていたのに。
(何なんだ、あいつ)
 手首なんて、竹千代の半分程しか太さが無いように見えるのに。歳も竹千代より下のはずなのに。
(悔しい……)
 何年鍛えても、竹千代の剣の腕はある一定から良くなることがなかった。これが自分の限界だなんて思いたくなくて、理玖に指南を請うても結果は芳しくない。
(やはり俺の才が無いことを、将監は見抜いて――)
「たーけちよ。ちょっと、聞いてんのか?」
「あ? ああ……」
 気付けばもろはが至近距離から見上げていた。
「首どうしたら良いんだ?」
「面倒だったら落としてそのまま持って帰るんだぞ。骨にする妖術が使えるなら、骨だけでも報酬は貰える」
「よし!」
 もろはは躊躇いなく首を落とす。髪を掴んで持ち上げた。
「重……」
(腕力自体は見た目相応なのか)
「そこに置くんだぞ」
 もろはが地面に首を下ろして、手を離したのを確認し、竹千代は指を鳴らす。賞金首の肉が砂となって崩れ落ち、そこには頭蓋骨だけが残った。
「おおー、すごい! ありがとう、竹千代」
「別に」
(これは理玖様に教えてもらった妖術。理玖様は、こんなこと誰だって出来ると言っていた)

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