宇宙混沌
Eyecatch

第1章:あのこはだあれ、わたしはだあれ [1/4]

 かごめ達は、もろはの借金返済祝いも兼ねて、無事に戻ってきた理玖を囲んで宴を催していた。村の外からも竹千代などの客人を呼んだが、[たけなわ]になってくると、会話も数人の集まりに分かれて進むようになる。
 理玖は会場の隅にとわを連れて行き、二人で甘い話でもしているようだった。その様子に気付いたかごめは微笑ましく見守りつつも、あることを思い出す。
「そういえば、もろはも付き合ってた男の子、居たわよね?」
 邪見が時折見せてくれたもろはの様子には、一時期、その側に同じ人物が度々現れた。その彼は今、この場には居ない。
「? 何の話?」
 もろはが首を傾げると、犬夜叉はケッ、と何処か勝ち誇ったように言う。
「俺の言った通りだろ。恋仲でも何でもねえって」
「そうだったの。ほら、何年か前に、よく一緒に妖怪を退治してた、もろはより少し年上の――」
「あーそれ俺なんだぞ」
 もろはの隣に座っていた竹千代が名乗りを上げる。
「えっ、竹千代君?」
 かごめは記憶の中の姿とは似ても似つかない子狸を見下ろす。いや、よく見ると確かに目付きは同じかもしれない。
「懐かしい頃の話をしてるねえ」
 割り込んできたのは理玖だ。目を輝かせているのは、その隣のとわだが。
「その話詳しく!」
 とわに肩を掴まれ、もろははどぎまぎする。
「なんでそんな食い気味なんだよ」
「だってもろはの恋バナなんて、そうそう聴く機会ないよ!?」
(良いところだったろうに、耳敏い相手を持つと大変なんだぞ)
 竹千代は理玖を憐れみの目で見る。理玖はそれに気付いて苦笑を返した。
「いや、だから付き合ってないって」
 もろはは顔を赤くして否定した。その様子に、犬夜叉と竹千代以外はニヤニヤと笑う。
「でも傍目にはそう見えたんでしょ!? それに、竹千代が変化[へんげ]をやめたのも気になるな。体小さいと不便じゃない?」
「大きければ良いってものでもないぞ」
「まあまあ。でもあたしも気になるわ。もろはが屍屋さんに居た時のこと」
 犬夜叉は興味が無さそうに、立ち上がろうとした。
「俺は別にどうでも良い」
「おすわり」
 強制的にその場に留められた犬夜叉の姿を見て、もろはと竹千代は悟る。これは何が何でもかごめに口を割らされる、と。
「は~、わかったよ。屍屋の思い出話な」
「竹千代との、だよ」
 とわが訂正する。もろはと竹千代は揃って溜息を吐いて、話し始めた。

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