眠る恋人を抱きしめて [3/3]
「とわ様~」
竹千代と別れて家に戻る途中、薪を背負った理玖と合流する。
「お疲れ」
「とわ様も。随分ゆっくり採ってらしたんですねえ」
「竹千代にばったり会ってさ」
「そうでしたか」
「この前はもろはに会ったんだ。って、どっちも二人共居たんだけどね」
「というと?」
「片方はもう片方の腕の中でぐっすり」
「はは、なるほど」
遠慮したけど、理玖が私の籠も引き取ってくれた。二人で我が家を目指す。
「それにしても、二人共気持ち良さそうに寝てるんだよ。好きな人にくっついて寝るのってどんな心地なんだろうな」
「……それは誘ってるんですかい?」
「あ……」
訊かれて顔が熱くなる。
「や、その、変な意味じゃなく」
「ハハ、冗談ですよ。とわ様がそんな器用なことをするとは思えません」
「それどういう意味!?」
「とわ様にはいつまでも初心でいてほしいって意味ですよ。でも」
理玖が立ち止まり、私の肩をぐいと引っ張った。碧の目が私を射貫く。
「そんなに知りたいなら、是非ともおいらを指南役に指名してもらいたいですね」
「…………」
私は頭が真っ白になって口をパクパクさせる。
「……なーんて、冗談ですよ。本当に冗談ですから!」
「なら早く離れろ」
急に理玖が慌て出し、背後から低音が凄んできた。肩を放してもらったので、振り返る。
「父上。どうしたの?」
「帰って来るのが遅い」
「まだ陽も高いじゃん。もろはの家に寄ってたの」
やれやれ。これまでスパルタ無関心だと思ってたら、今度は過保護過干渉になっちゃって、参ったよ本当に。
「犬夜叉の家に?」
「あっ、そこも地雷だった」
「先程まで犬夜叉が家に来ていた」
「ほ?」
思わず変な声出ちゃった。いつも村で犬夜叉さんを見かける度に小さく舌打ちしてる父上が、家に、犬夜叉さんを、上げた?
「そりゃどういった風の吹き回しで?」
理玖が代弁してくれたが、父上は一瞥しただけで、飛んで家に戻ってしまう。
「何だったんだ、今の」
「さあ……」
首を傾げつつも、私達も歩を進める。
「あ、さっきの返事」
私は学んでいた。返事はなる早に限ると。結果的に邪魔が入った事で気持ちが落ち着いたから、父上サンクス。
「へ?」
「私が理玖以外を指名するわけないじゃん」
今度は理玖が真っ赤になって、無言で口を開けたり閉じたりする番だった。ふーん、自分も結構初心じゃん、なんて思いながらも、恥ずかしくなってきたので顔を見られないように速度を上げた。
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Written by 星神智慧