なんだかもっと甘くてロマンチックなものを想像していた。
しかし竹千代から与えられたファーストキスは生温くて不器用で。もろははその生々しさに尻込みした一方、きゅう、と下腹部が疼く。
「好きだ」
それは竹千代なりに、もろはの恐怖を和らげようとしてくれたのだと思う。しかし、口内を舌が、素肌の上を大きな手が撫でていくのは、どうしても怖い。
(竹千代、だよな?)
黙られると触れ合った場所の熱しかわからない。自分に覆い被さる影が誰だかわからなくなって、もろはは思わず枕元を探った。
リモコンを見つけ、素早く三回押す。豆電球だけにして、相手の顔を確かめた。
「……どうした?」
「真っ暗で失敗したら目も当てられねえだろ」
強がりだって、きっと竹千代は察している。そうだな、と言って撫でるのをやめると、もろはの頬を手で包み込んで、優しく口付けた。
「嫌なら本当にやめるぞ?」
竹千代もまだ迷っている。いくら法的にも肉体的にも許されるとはいえ、相手は中学生だ。自分も経済的に自立しているとは言えない。万が一避妊に失敗しても責任が取れないんだから、我慢すべきだ。理性はそう言っている。
「嫌じゃないよ」
もろはは竹千代の首に腕を回す。
「その……アタシも竹千代のこと、好き、だよ」
さっき言葉にできなかったことを伝える。
「将来竹千代の赤ちゃん、産んであげたい……」
「……中学生がする告白じゃないぞ、それ」
「だって家族欲しいんだもん」
また不貞腐れたもろはを、竹千代は宥めるように抱き締める。
そこにはただ寂しさだけがあった。血が繋がった家族の居ない寂しさ。実の親から冷たく当たられる寂しさ。
そして、その穴を埋められるのは、お互いしかいないと思っていた。
体の凹凸を埋め合わせれば、その穴も埋まるのだと信じていた。