宇宙混沌
Eyecatch

第5章:流浪の民 [2/5]

「――というわけで口は付けてないから」
「そうか。ありがたく戴く」
 せつなは複雑な顔で豆腐を受け取った。翡翠が欲しそうにしたので、せつなが一切れその口に突っ込む。おいらも椅子に座ると、飲み込んでから翡翠が言った。
「豆腐のことは残念だけど、記憶戻って良かったな。まだ全部じゃないのか?」
「わからねえ。少し混乱したみたいだが、あの調子だと残りも今日明日中には戻るだろ」
 もっと錯乱して暴れたりしたらどうしようかと思ったが、なんとか免れたようだ。竹千代の本来の姿を見たことはないが、飛行姿や先程の策からして、殺生丸くらいの大きさはあるのだろう。自棄になってあの質量で暴れられたら、船が沈みかねない。
「竹千代が大人しい奴で良かったよ」
「大人しいっていうか、大人びてるっていうか。俺、この前の話すごく心に響いてさ」
「何の話だ?」
 せつなとおいらは首を傾げる。
「愛を確かめる為に体を重ねるみたいな」
「ほう。確かめてみるか?」
 せつなが無表情のまま翡翠の目を見る。
「そういう話はおいらが居ない時にしてくれよ」
「冗談だ」
「冗談なのか……」
 翡翠は赤くなったり青くなったり忙しい。遊ばれてやがる。
「何にせよ、元に戻るならそれに越したことはない」
「そうですね」
 おいらは席を立つ。窓から海を見た。
「今夜は時化るかもなあ」

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