第11話:戦いの終わり [3/4]
「大体状況証拠しか無いじゃろう! 田貫の自白も信憑性が――」
「なら、弊社のバックアップサーバーを調べさせましょう」
見苦しくもまだ無罪を主張する狸穴に声をかけたのは、長い銀髪の男性だった。
「えっ!?」
それを見ていたとわが、裏返った声を出す。
「あ、貴方は……?」
「『りんセキュリティ』の社長さん」
母親の言葉に、狸穴の顔が凍りつく。
「ま、まさか家の中にまで?」
「ええ、鍵が付いている個室とお風呂場以外は全て。内装重視で目立たないカメラを」
「し、しかし……」
「弊社では最長で五年分の記録を残しています。狸平さんの加入しているプランなら、残っているはずですが」
「まあ、では是非」
「ありゃあ、もう言い逃れできねえな」
無事お縄になりそうなのを確認した理玖がとわを振り返ると、そこにはギロリと睨みを聞かせる、彼女の妹が居た。
「ほわっ!?」
「とわの先約が、まさかお前達のことだったとはな」
「そっちこそ、まさかお父さんの用事が此処だったなんて~」
話がついたのか、とわの父親も理玖達に合流する。
「何故とわが此処に? 此方は?」
とわの隣に立っている青年を睨んだ。
「おいらは――」
ここで理玖は思い切る。
「とわさんとお付き合いさせていただいてます、希林理玖と申します!」
「えっ」
「ほう……」
とわの父親は眼光を強めた。
「酒は飲めるか?」
「ええ」
「少し二人で話そう」
「失礼の無いようにね」
是露が背中を押す。せつながとわに噛み付いた。
「いつから?」
「うーん、えーっと、今日?」
「どういうことだ!?」
騒がしくなった集団から、竹千代は一人離れる。もろはがついてきて、隣に並んだ。
「そのドレス、もろはちゃんによく似合うわ」
狸穴を部下に拘束させ、一息ついた竹千代の母親が近づいてきた。
「貴方のスーツはまだまだだけど」
竹千代はウェイターからソフトドリンクを貰って、喉に流し込む。
「別に何でも構わないでしょう。俺は後を継がないのだし」
「でも他のブランドを立ち上げるんじゃないの?」
「え?」
「私の祖国に留学させようと思ってたのよ。でも日本語での進路相談が初めてで、先生達には上手く伝わらなかったみたい。貴方は貴方で、通訳してくれるどころか、いっつも話半分に聞いてるから……」
「その意図は今認識しました」
「でしょうね」
顔が熱い。間違って酒を取ったか? と竹千代はグラスを見つめる。
「もちろん、真面目に通学するのが条件よ。条件を満たして、その気になったら言いなさい」
母親は言い残して去る。もろはが竹千代の腕に絡みついた。
「良かったじゃん! 勉強させてもらえるって」
「うん……」
素直に喜べない自分が居た。腕を掴んだもろはの指が、寂しさで震えていたから。
「俺は……」
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