宇宙混沌
Eyecatch

第11話:戦いの終わり [1/4]

「一点物の簪が、何故、狸平の家にあったのかな?」
「わかりません。俺は古物商でバイトをしていて、店長が俺の家から買い取ったという品を、買い戻して見せてもらっただけですから」
 竹千代は淡々と、予定通り事実だけを口にする。
「盗んだ物を隠した箱を処分されたから買い戻したのでは?」
「盗んだ? この子が?」
 狸穴の尋問中、是露が口を挟む。
「是露さん、竹千代君には万引きの前科がありましてね」
「だとしてもこの子じゃありません。この簪が失くなった時、竹千代君は倒れて控室に居ましたから」
「うぐ……」
(物忘れがひどくなってるのは本当みたいだぞ)
 竹千代のアリバイの事を忘れているとは。
(案外簡単に済むかもしれないな)
「ぜ、是露さんが何故それを?」
「おいらも人酔いして、一緒に休ませてもらってたんですよ」
「理玖、言葉遣い」
「すみません」
(よし、私の台詞だ)
 とわは気取られないように、首を傾げて顎に指を添える。
「でも、じゃあ、どうして竹千代さんの家にこの簪が?」
 落ち着きを取り戻したもろはも続く。
「竹千代以外の誰かが拾って、そのまま持って帰ったんじゃねえの?」
「そ、そうだろう、きっと。ほら、使用人が同伴していたじゃろ、そやつとか」
「タカマルさんなら、母さんが骨董品を定期的に入れ替えてるのも知ってます。[うち]に隠すなら、もっと安全な場所にすると思いますが」
 是露も狸穴の強引な決めつけに、眉根を寄せる。
「タカマルさん……確か紛失を指摘してくれたのもタカマルさんです。犯人がわざわざ言いますか?」
「うぐぐ……」
「じゃあ竹千代の弟? お袋さんは、自分で隠したこと忘れて、鍵も付けずに売り飛ばすなんてうっかり、しそうな人には見えないし」
「菊之助は今よりもっと小さかったんだぞ」
「とてもじゃねえが、アネさんの頭からそっと抜くなんて無理だな」
「ええ、じゃあ一体誰?」
 もろは、竹千代、理玖、とわが順番に台詞を熟して、再び竹千代の番が巡ってきた。
(正念場なんだぞ)
「狸穴さん」
 竹千代は丸々と太った男を見上げた。
「狸穴さんは、昔から俺の家に時々出入りしていましたよね」
「そういえば」
 是露が何かを思い出して、狸穴の顔を見る。
「あの会場で私が人にぶつかられた時、私と話していたのは狸穴さん、貴方でしたね……」

闇背負ってるイケメンに目が無い。