宇宙混沌
Eyecatch

第4章:紅を移す [3/5]

良き相棒

『良いか、まずアタシが囮になる。お前はその間にあの妖怪の後ろに回って、飛び上がるんだ。お前は本来の体重までなら変化で重さを調節できるって言ってたから、あの妖怪の上に来たら、元の体重まで重くして踏みつける。そうすりゃ、倒せはしなくても動きは止められるだろ』
「こんなに上手くいくとは思わなかった……」
 儂の足の下では、うつ伏せに押さえ付けられた妖怪がじたばたと虚しく暴れていた。妖術の類が使えぬ奴で助かった。
「竹千代! もろは!」
「何の騒ぎだ?」
 用事を済ませてきたらしい理玖と翡翠が合流する。もろはが答えた。
「人喰い妖怪が町に出たから、とりあえず動き止めた」
「でかしたぞ、二人共」
 言って、翡翠が嬉しそうに理玖を見る。
「丁度、次の仕事としてさっき頼まれた奴だな。首を戴くとするかね」
「ヒッ、やめ、命だけは……!」
 足の下の妖怪が命乞いをした。
「もう随分人間を食い殺したそうじゃねえか。悪いがおいら達は、金を払ってくれる奴の言うことが一番なんでね」
 理玖は何処からともなく剣を出す。
「竹千代、顔背けてな」
 言われたが、そのまま首が落とされるのを見ていた。
「見るなって言ったのに……って、怖がらないんだな」
「? 別に、打首など見慣れておるが」
「狸平も物騒だな」
「物騒というか、将監がちと厳しい罰を与える癖があるとは思う」
 儂の言葉に、皆の顔色が変わった。
「どうした?」
「なんでもない。それより、どうやって大人しくさせたんだ?」
 儂は理玖にもろはの策を繰り返す。体重を人並みにして、妖怪の死体から降りた。
「あまりにも無駄の無い連携で自分でも驚いた。実はもろはと儂は良い相棒だったのではないか?」
「そうだぜ?」
 理玖の返答に、儂は顔を覆ってその場にしゃがみ込む。
「仕事仲間に手を出したのか儂……」
「何かまずいのかい?」
「儂はもっと自分に分別があるものだと思っていた……」
「順番が逆だぜ。お前アタシのことが好きだから一緒に仕事してたんだろ。つかそれ、気付くならさっきの説明で気付けよ」
「まだ思い出せていないことを明け透けに言わんでくれ……」
「まあ、仕事仲間に手を出すといえば……」
 理玖の意味深な声に顔を上げる。理玖ともろはは、にやついて翡翠を見ていた。
「ちょっ、俺を見るな! 俺はまだ何もしていない」
「へ~え。『まだ』ねえ」
「あんまりのんびりしてると、お前が勃たなくなるぜ」
 理玖は冗談を言ってから、落とした首を布に包んだ。
「二人の手柄だ。今度はお前達が来るか?」
「アタシはやめとく」
「帰るなら豆腐を頼む」
 理玖と翡翠が、立ち上がった儂を振り向いた。やはり豆腐に何かあるな。

Written by