おまけ:俺の用心棒なんだぞ
の後
「俺、実は狸平の当主なんだぞ。……狸平って家を知ってるか?」
「う~ん?」
「知らないなら正直に言えば良いんだぞ。今更お前の知識に期待しておらんわ」
「ちょっと待って、多分知ってるから!」
そう言われたので待ってやる。が、うんうん唸ったまま返答は無い。
「俺から説明して良いか?」
「いや、アレだろアレ! お前狸妖怪の中じゃ偉い奴なんだろ!?」
「今勘で言っただろそれ。外れてはないけど」
俺は肩をすくめる。
「お家騒動……と言うのが正しいのかわからんが、俺は十の時に家を追われてな」
「なんか事情があるのには気付いてたよ。本当は幾つなんだ?」
「十七になったな」
「やっぱり歳上か。最初は結構澄ましてたのに、子供のフリも年々上手くなったよな」
「まあ、お前等とワイワイやるのは楽しかったんだぞ」
「よし! このもろは様に任せな」
「まだ何も言ってないが」
「お前の用心棒だろ? お前を追い出した奴に、いよいよ復讐の時、ってことじゃないのか?」
「本当に勘だけは鋭いんだぞ」
俺はもろはを見上げる。此方に笑いかける表情は、初めて会った頃から変わらないな。
「報酬は、成功してもしなくても出す」
「えっ」
もろはは先程までの調子の良さが嘘だったかのように言葉に詰まった。
「それって……」
「俺に何かあったら代わりに払うよう、家来に申し付けている」
「それじゃ……」
「この仕事を請けた時点で、お前の自由は決まるんだぞ」
さあ喜べ、と上からものを言ったが、もろははぎこちなく笑って、それから怒り出した。
「アタシがついてってやるんだから……っていうか、アタシがお前を守るのが仕事なんだから、『何かあったら』とか言うなよ!」
「簡単に事が進むならとっくにやってるし、お前に打ち明けてまで頼まないんだぞ」
「……そりゃ、そうか……。ま、失敗した時の事より、成功した時の事を考えようぜ」
「そうだな」
「竹千代も一緒に行こうよ」とは、言ってくれなかった。でも、きっとそれで良い。