宇宙混沌
Eyecatch

第4話:戦闘服を探しに [3/4]

 屍屋の戸を開けた理玖の目に飛び込んできたのは、嬉しそうな顔のとわと、カウンターの奥の獣兵衛、それからカウンターに肘を突いた竹千代だった。
(どういう状況?)
 理玖は瞬時に考えを巡らせる。
(おいらが来るのは金曜ってちゃんと伝えたぜ? それに、竹千代に物申しに来たとわちゃんが、なんで今日は嬉しそうにしてる?)
「竹千代、二股!?」
「だから違うって!」
「違うのか、良かった」
(良かったって何だぞ)
 今度は竹千代が考える番だ。
(ハハーン、さては理玖様、一目惚れとかいうやつ)
「立ち話もなんだ。入りなさい」
 獣兵衛に言われて理玖が入ってきたので、とわは慌てて奥に進んだ。カウンターまで来ると、竹千代が気を利かせてくれる。
「割れ物だし包むか?」
「お願い」
「林檎、お好きなんで?」
 理玖はそこで漸く、とわが持っていた物に気付く。
「はい! 竹千代さんにプレゼントして貰っちゃった」
 ああそれで嬉しそうにしていたのか、と納得した一方で、理玖は腑に落ちない。
「竹千代、こういうのを二股って言うんだぜ?」
「あーもー! 何回同じ説明させる気なんだぞ!」
 竹千代が先程の説明を繰り返す。理玖は胸を撫で下ろした。
「ところで、竹千代ともろはが付き合ってるのは皆さん知ってたんですね」
 竹千代が包んでくれた林檎を受け取りつつ、とわが眉を下げる。
「私、全然知らなかった……」
「ん? いや、俺は冗談で言ったんだが、お前達いつの間に?」
「あー、先週からだぞ……」
(理玖様~~獣兵衛さんには、泊まらせたことは内緒で頼むんだぞ~~~)
 竹千代の視線に、理玖は察して目配せをする。
「いやあ、おいらも金曜に聞くまで知りませんでしたよ。それより今日は竹千代に相談があってさ」
(相談する前にいつもの服でうっかり会っちまった……)
 しかもこれを本人の目の前で相談しても良いのだろうか。悩まなかった訳ではないが、きっと後からでも格好良くなってくれる方が相手は嬉しいに違いない。
「お前んち、アパレルの会社だろ? おいらも歳相応にまともな恰好しようと思ってさ。どんな風に服選べば良いか教えてくれたりすると……」
 言葉は尻すぼみになる。竹千代の表情がどんどん険しくなったからだ。
「俺は社員でもないし、母さんとは三者面談の時くらいしか顔合わせないし、会社の力は借りれないぞ」
「そ、そうか。無理言ってすまん」
「俺個人が買い物に付き合うくらいならできますけど」
 そこで竹千代はとわを見る。
(此処に格好良く見せたい本人が居るんだぞ)
「俺なんかより女性の意見の方がありがたいんじゃないですか?」

闇背負ってるイケメンに目が無い。