宇宙混沌
Eyecatch

第2話:御曹司の事情 [2/3]

もろはのこと送って、俺もそのまま帰ります」
 その日もいつものように、竹千代はもろはと時間を合わせて退勤した。
「帰りたくない」
 もろはがそう言ったのもいつものことで、いつものように寄り道をした。公園でブランコに座るもろはの背を押してやっていると、巡回中の警官に声をかけられた。
「君達塾の帰り? もう暗いから程々で帰るんだよ」
「はーい」
 いつもはそれでもろはの足も居候先に向かう。でも、その日はもう一度繰り返した。
「帰りたくない」
「うち来るか?」
 これ以上外に居ても寒いし、補導の可能性が高まるばかりだ。もろはが「帰っても良い」と思えるまで、屋根壁ある場所で休ませた方が良い。
「泊めてくれんの?」
 竹千代にそんなつもりは無かった。
(でも、可能性は全て考慮に入れておいた方が良いか……)
「泊まりたければ」
 夕食を買いにコンビニに入ったついでに、コンドームもカゴに入れた。それを見て口を引き結んだもろはを待たせ、会計を済ませた。
「た、たけちよ、」
「泊まるったって布団一つしかないんだぞ。俺我慢出来ないかもしれないし、そうなったとき無いよりある方が良いだろ?」
「そりゃそうだけど……」
 だけど、竹千代と付き合っているわけじゃない。どちらかから告白したこともないし、手を繋いだりキスしたこともない。
(そういうの全部飛び越えて、いきなり大人になるのか、アタシ達)
 そんなに悪くないと思った。竹千代は黙っていきなり押し倒してくるような奴じゃない。
「……順番間違えたんだぞ。俺、お前のこと好きだ」
「……うん……」
 もろはは返事の代わりに、竹千代の空いている方の手を握った。
(ちゃんとこうして正直に言ってくれるところ、好きだよ、アタシも)
 だからそういう雰囲気になった時、拒まなかったのに。
 どうして竹千代は変わらず寂しそうな顔をしてるんだろう。

闇背負ってるイケメンに目が無い。