宇宙混沌
Eyecatch

末摘花 [1/8]

出会い

 目覚めると見知らぬ天井が見えた。開けた胸元を早朝の冷たい空気が冷やす。腕には何かが乗っていて、隣を見ると、これまた知らない女が眠っていた。
「あー……」
 思い出した。賞金首を追っていたらかなり遠くまで来てしまって。帰る途中で日が暮れて、夜道を歩いていたら遊女に誘われて。寒かったし、今日は持ち金もあったから中に入って。
 女を起こさないように腕を引き抜き、身支度をする。
 気分は最悪だ。甘い夢は所詮、夢でしかない。行きずりの女との未来は無いのに、そのくせ孕ませたかもしれないとか、変な病気を貰わなかったかとか、延々考え続けることになる。ましてや、相手は俺が化け狸だって、知らないんだぞ!
 金は支払ってある。逃げるように外に出た。天気は良い。俺の気持ちと真反対に。
 何よりあの行為は足腰に来る。折角此処まで来たので、帰りにもう一人仕留めようと思っていたが、疲れでしくじった。諦めて今度こそ帰ることにし、屍屋に辿り着いた頃には、もう宵闇が迫っていた。
「戻りました」
「遅かったな。首は一つか」
「ちょっと遠くまで逃げられて……?」
 荷物を置こうとして、獣兵衛様の隣に座っている子供に気が付いた。
「その[おなご]は?」
「もろはだ。訳あって身請けした。お前と同じように賞金を稼いでもらう。ということで、部屋も半分使わせてやってくれ」
「ふうん」
 身請けか。遊女屋よりはマシだろうが……。
 俺は首をもろはの隣に置いた。もろはは顔を顰める。
「何の臭い?」
「血腥いのは苦手か?」
 そんなことで賞金稼ぎができるのだろうか。
「血っていうか……生臭いのは生臭いけど……」
 ……もしかして、昨夜の情事のがまだ残ってるのか? にしても鼻が良いな。
「言い忘れていた。もろはは犬の四半妖だ」
「なるほど。先に着替えてくるんだぞ」
 首を飛び越えて奥の部屋へ。適当に脱ぎ捨てたが、そういえば半分空けなければ、と脇へ寄せておく。
「三人分か……」
 店の方に戻って、食材の入った壺の中を覗く。
「こいつが作ってくれるの?」
 もろはが獣兵衛様に問う。
「ていうか、お前名前は?」
「竹千代」
 今度はこっちに訊かれたので、自分で答える。材料を出して、壺の蓋を閉めた。
「竹千代……良い名前だな!」
 そう言って笑ったもろはは、明るく咲いた花のようだった。

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