宇宙混沌
Eyecatch

第2章:理玖、教えを実践する [4/4]

「――と言った後、せつなに『勝手にとわに触るな』と薙刀で威嚇されましてね。というわけで、今日の進捗が皆無なんだが」
「残念だったんだぞ」
「つかなんでもろはまで居るんだよ」
「竹千代とばったり会ったからさ」
 何処でだよ。お前、今日は両親に挨拶してくるって言ってただろ。さては竹千代、おいらのこと尾行[つけ]てたな?
「日が変わるまでには家に送ってやるんだぞ」
「え、良いよ屍屋[こっち]に泊まるよ」
「暫く会えないんだから、親御と一緒に居てさしあげろ。あといずれにせよ夜着が一つしか無いぞ」
「一緒に入れて♥」
「お前寝相悪いから嫌なんだぞ~」
 目の前でイチャつくな。特大の溜め息を吐くと、竹千代がおいらを見た。
「大体、そんなに焦るほど現状に不満なんだぞ?」
「そーだよ、とわと仲良くないわけじゃねーじゃん。理玖の旦那は強欲だな~」
「まあ、不満という不満があるわけじゃないんだがね……」
 おいらは祈るように指を組んで、親指をぐるぐる回す。
「正直に言えば、一刻も早くとわ様との御子の顔を見たい」
「正直すぎて引いたんだぞ」
「強欲~~~。つか、流石はあの親馬鹿[きりんまる]の分身って感じだな」
「煩えよ! 良いよな、お前等は相手が決まってて!」
 おいらが叫ぶと、二人は揃って首を傾げる。
「「何の話???」」
 えぇ、これだけ距離近くて、本当に男女の仲ってわけじゃないのか……。おいら逆に心配になってきたんだが。
「で、明日中になんとかしたい気持ちに変わりは無いんですか?」
「変わりない」
「仕方ないんだぞ」
「付き合ってくれるのか」
「竹千代も世話焼きだよな~」
「数少ない交誼[よしみ]だしな」
「別に報酬貰ってるわけじゃないんだろ? それとも何か? 理玖テメェ、また竹千代の弱み握ってんじゃねえだろうな!?」
「今回はそんな事してねえよ!」
 おいらが「もろはを殺したい」って、竹千代の前でも度々口にしてたのは事実だから弁明のしようが無いのだが、己の信用の無さに、おいらは自信を失くす。別れの間際に「愛する人は殺せない」とは言ったものの、とわ様にも相変わらず妙な信念の持ち主だと思われてたらどうしよう。
「成功報酬でどうだ?」
「金には困ってないんだぞ」
「まあそう言わずに。金じゃなくて、何か他の欲しいものでも構わねえぜ」
「平穏な暮らし」
 竹千代が短く言った。おいらが黙っていると、繰り返す。
「平穏な暮らし」
「いや、本当にすまねえ、許してくれ」
「はいはい。今回は餞代わりなんだぞ」
 つまり、どうやってもおいら達について、伊予に行く気も無いと。
 おいらが顔を上げると、竹千代の隣で、もろはもおいらと似たような表情をしていた。

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