第3話:理玖、とわを謀る [1/4]
「いっそ強引に押し倒しちまえよ」
もろはの発言に、おいらは淹れてもらった茶を盛大に吹き出した。雑巾を出した竹千代も、「解せぬ」と言いたげな呆れ顔だ。
「お前がそれを言うのかだぞ?」
「?」
「いや何でもない」
竹千代は一拍置いて、言葉を選びながら続ける。
「理玖様、お解りでしょうがこの手は大変危険なんだぞ」
「ああ。下手すりゃ百年の恋も冷めるだろうねえ」
「そうか?」
イマイチよく解っていなさそうなもろはに、竹千代の眉間の皺がより深くなる。理玖は違和感を感じたが、深追いはしない。もろはは竹千代に噛みつく。
「じゃあ他にどうするつもりなんだよ」
「周りから固めるとか」
「それって殺生丸様に先に挨拶しろってことかい?」
「親の許しがあるのが一番強いんだぞ」
「殺生丸様を説得するのが一番難しいだろ」
「順番がどうあれ、いずれは説得することになるんだぞ……」
日が暮れて時間が経った。おいら達は、未だ良い案が浮かんでいない。
「そうだ」
床に寝転んでいたもろはが、何かを思いついて飛び起きる。
「理玖の良いところをとわに見せつけてやれば良いんじゃ?」
「つまり?」
「とわが好きそうなことをするんだよ。守ってやるとか。気持ちが昂ぶれば勢いで言ってくれるかも」
「なるほど。しかし、そう都合の良い出来事なんてありは……」
そこで今度はおいらが思いつく。
「そうだ。竹千代が悪役をやってくれよ」
「八百長はやめた方が良いと思うぞ」
「ああ。それこそバレたら絶交ものだぜ」
「なんでさ」
「前にもやってバレて盛大に怒られたんだぞ……」
話を聞く。愛矢姫とかいう姫様に仕組まれた合戦で、退治屋共と共謀しただって?
「前科者かよお前ら」
おいらは頭を抱える。
「でも、そんな大層なものじゃなくて良いぜ? 竹千代が色男に化けて、とわ様にちょっかいかけるのを、おいらが止めるとかさあ」
「竹千代の人型、下手すると理玖の旦那よりとわ好みの顔してるぜ?」
「えっ?」
「というか、俺は人間には化けないんだぞ」
「律儀だねえ」
「俺の中では終わっていないからな」
その言葉に、もろはが眉を下げて竹千代を見下ろした。なんか気まずくなっちまったな。
「ん~~~、じゃあ、竹千代が適当な妖怪に化けて、賞金首の振りをしてくれよ。もろはが妖怪退治に誘って二人が苦戦してるところに、おいらが助けに入るとか」
「もろはととわを同時に相手とか、一瞬で死ぬぞ」
「アタシは手加減できてもとわがなあ……」
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