宇宙混沌
Eyecatch

第1章:理玖、竹千代に教えを乞う [3/3]

「それで、結局何の御用で?」
「お前も伊予に来いよ」
「俺は行かないんだぞ」
「なんで!?」
 竹千代はそれらしい理由をつらつらと並べた。戦えない自分がついてったって足手まといだの、屍屋の仕事がどうのこうの。
「絶対に来ないのか~?」
「絶対に行かないんだぞ」
 やれやれ、竹千代の頑固さはおいらもよく知っている。一旦話題を変えるか。
「じゃあ二日で女を落とす方法を教えてくれ」
「なんで二日」
「竹千代が一晩で落とせるなら、余裕持って二晩かなと」
「訊く相手間違ってるんだぞ。というか、女抱きたいだけなら、理玖様もその顔を存分に使えば良いんだぞ!」
 竹千代は裁縫をしていた手を止め、おいらの額を指差す。
「それが、相手の方がおいらよりも麗しい顔立ちで」
「なんだとわの事か」
「なんでバレてんだ」
「寧ろ、あの登場の仕方でバレないと思ってたんだぞ……?」
 うう、そう言われればそうかも。
「だとしたら本当に訊く相手間違ってるんだぞ。俺は振られた事しかない」
「振られた……ってことは告白か求婚はした事あるんだな!?」
「なんでそんな目を輝かせるんだぞ」
「頼む! 参考にさせてくれ!」
「振られた方法聞いてどうするんだぞ」
「その方法は避ける」
「なるほど。でもそんな回りくどい事するより、成功した奴に訊く方が早いんじゃ?」
「おいら達、他に友達居ないじゃねえか」
「しれっと俺も含まれてるのが癪だけど事実なんだぞ……」
 竹千代は何度目かわからない溜め息の後、続けた。
「わかりました。一緒に方法を考えて差し上げるんだぞ」
「本当か!? でもその前に、失敗した時の事教えてくれ」
 竹千代は言葉に詰まり、目を逸らした。
「? なんだ、言えねえのか?」
「いやちょっと、改めて思い出すと結構最悪な事してるし、もろは達には黙っておいてほしいんだぞ……」
「解ったよ」
「……向こうが結婚したいって言ってきたから、押し倒したり逃げたの追いかけたりした」
「うわあ最悪」
「反省はしてるんだぞ」
「竹千代も男なんだな~」
「二日で女モノにしたいとか言ってる人に言われたくないんだぞ」
「悪い悪い。で、何か良い案あるかい?」
「普通に告白すれば?」
「普通すぎる!」
「だって傍から見たら両想いなんだぞ」
「そうかもしれないけど、本当のところは判らないだろ!」
「だから告白して確かめるのでは」
 正論! でもそうじゃなくて。
「おいらは確実に『うん』と言ってもらいたいんだって!」
 面倒くさ。竹千代の表情がそう言っている。
「というか、お前さっき相手に求婚されたって言ってたな? それだ、その状態になりたい」
「俺達の場合、それまでに一年一緒に暮らしてるが」
「長い~~~」
 おいらは頭を抱えた。
「六百年生きてる方が何を仰る。一年なんて妖怪にはあっという間だぞ」
「それはそうだが……」
 いや待てよ。「一緒に暮らしてる」って……。
「竹千代、それってもしかして、もろはか?」
「口が滑った……」
 本当なのか。いや、まあ、他の女だって言われる方が驚きだけど。
「理玖様」
 竹千代が裁縫道具を置いて立ち上がった。
「ちょっと」
 顔を近付けるように言われた。背を丸めて言われた通りにすると、竹千代がおいらの額に手を翳し、何かを呟く。
「んん?」
 一瞬、頭が真っ白になる。気付けば竹千代は再び針を握っていた。
「あれ、何の話をして……?」
「とわに告白する良い方法を考えるんだぞ?」
「そうだった。やっぱり花とか贈るのが、普通だけど間違いねえかな?」
「そうですね。すぐ萎れるのに、女はなんであんなの好きなんだぞ?」

Written by