宇宙混沌
Eyecatch

第1章:理玖、竹千代に教えを乞う [1/3]

「ごめんよー」
 おいらは屍屋の暖簾を潜った。獣兵衛が帳簿から顔を上げる。
「理玖様」
「竹千代は居るかい? というか、竹千代も伊予に連れて行きたいんだが」
「俺は構いませんが。奥に居ます」
 おいらは上がらせてもらい、竹千代の部屋へ。
「竹千代。!?」
「理玖様」
 こりゃ驚いた。竹千代は、彼よりも少し背の高い赤子の子守をしていた。
「お前、隠し子居たのか!?」
「なんでそうなるんだぞ。どう見ても人の子なんだぞ」
 竹千代は眉根を寄せる。
「たけちゃ!」
「なんだーたえー」
 呼ばれて竹千代は子を抱き寄せる。たえ、というのが赤子の名か。
「え、じゃあもろはの?」
「いや、だから、この子の親はどっちも人間なんだぞ。多分」
「多分って」
「父親がわからないんだぞ」
「母親に訊きゃわかるんじゃ?」
「知恵遅れと、あと多分耳も悪くてな。口が利けぬ」
 はあ。とにかく何か訳ありの子だというのは解った。
「で? なんでお前さんが面倒見てるんだ?」
「普段はこの子の爺さんが世話してるんだけど、ぎっくり腰で。村の奴等は冷たいし、うちしか預かるとこ無いんだぞ」
「はあ……」
 竹千代もお人好しというか、面倒見が良いというか。
「まあ、竹千代に子供なんか居るわけないよな。どうせ女も知らないだろ?」
「ハァ?」
 竹千代は眉間の皺を深める。
「女の一人や二人くらい抱いた事あるんだぞ」
「えっ!?」
「なんで意外そうなんだぞ。俺もう十八なんだが」
 もう十八って……じゃあ齢六百で童貞のおいらは一体……。
「いや、ちょっと待ってくれ」
 抱いた女が一人ならまだ解る。実はもろはとデキてる場合だ。けど、
「『一人や二人』って……何処で……?」
「んー、行きずりの女的な? 出先で泊まらないといけなくなった時に、その家の女に迫られて、とか」
「おいらの夢を壊さないでくれ竹千代」
 お前「可愛い子狸」で通してたんじゃないのかよ!
 そこでハッと思い出す。そういや、獣兵衛が言ってたな。竹千代は問題を起こした事があって、罰そして和解条件として、人間に化けるのを禁止してるって。
「お前まさか、問題って女関係……」
「違いますけど、どっちがマシかって言われるとどっこいどっこい……」

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