宇宙混沌
Eyecatch

君が冷たいのはその胸の内が熱いから [11/12]

 俺は山の中で三本目の花輪を待っていた。もろはが全然話し始めないから。
「……昔もこうして花を俺の頭に乗せたんだぞ」
「うん」
「思い出したんだろ」
「うん」
 痺れを切らして此方から切り出したが、手応えがない。
「竹千代本当に偉い奴だったから、十本くらい乗せとけよ」
「日が暮れるわ。それに、すぐ萎れて……」
 萎んだのは言葉の方だった。俺はそんな考えに取り憑かれて、「今」食べなければと焦ったのだった。結果として、今もお預けを食らっている。
「思い出したなら、俺がお前から離れたい理由も解るだろ」
「わかんない。なんで?」
「お前本当に馬鹿なんだぞ……」
 俺は三本目を頭に乗せようと近付いたもろはを見る。やはり目に毒だ。
「振られた女に、好き好んでついて行って、尚且つ笑ってられるほど俺は気が強くないんだぞ」
「嘘だろ!? お前の気の強さは誰にも負けねえと思ってた」
「いや、俺言うほどでもないと思うが。臆病だし」
「確かに」
 四本目に取りかかるもろはの手を掴んでやめさせた。あの日、追いついた時のように。
「忠告しといてやる。好きでもない男に不用意に纏わりつくんじゃないぞ。こうやって勘違いされる」
「勘違いじゃないよ」
 聞き間違いかと思った。眉を寄せて首を傾げていると、大きな声で繰り返される。
「勘違いじゃないよ! 振ったつもりもない! ただ、その、いきなりはびっくりしたっていうか……」
「……確かにあれは俺が悪かったんだぞ」
「急に素直に謝られると逆に気持ち悪っ!」
「じゃあどうしたら良いんだぞ」
「こうだよ」
 もろはは手に持っていた花を落とした。俺の胸倉を掴んで、唇を寄せる。
「……いきなりはびっくりするんだぞ……」
「だからそう言ってるじゃん」
「あの時は屁理屈捏ねたんだぞ」
「あーーそうだよ! 正直に言うの恥ずかしかったの!」
 俺は花冠が頭から落ちているのに気付いて、拾い上げる。
「それで、お前はどうするんだよ?」
 俺は冠を頭に乗せると、照れ隠しで花を摘む速度を上げたもろはに、昨日とは逆の答えを言った。

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