宇宙混沌
Eyecatch

第3章:Never come true


 めっっっちゃくちゃ大事なこと今思い出した。私、理玖に赤ちゃんできたこと伝えられてないんだった~~~!
 追いかけてくるって言ってたから、そのうちこの村に来ると思うけど、父上やせつな達に会う前に話を擦り合わせておかないと、なんだかまずい予感がする。でも今頃は船の上だろうから手紙も出せないし……。
「こんにちはなんだぞー! とわが帰って来たと聞いて、お邪魔しに来たんだぞー!」
「竹千代~」
 丁度良いところに来た。私は一緒に留守番(子守り)をしていた父上に一声かけて、竹千代を迎え入れる。
「それにしても立派な屋敷なんだぞ」
「父上が住むならあばら家じゃ駄目ー! って、邪見が譲らなかったみたい。ところで、もろはと一緒じゃないの?」
「もろはは今日は親父殿と一緒に仕事なんだぞ」
「そっか」
 うちも、せつなは退治屋の仕事へ、母上は邪見と山菜採りに行っている。そしてだいたいいつも、私と父上とクロが取り残される。父上はあれきり何も言ってこない。
「腹の子もめでたいんだぞ! 理玖様はいつ頃いらっしゃるんだぞ?」
「それがわからなくて……。瞬間移動とか使って理玖だけ来るなら、もうそろそろ来てもおかしくないけど、近くまで船で来るとかだと時間かかるし、私が仕事ほっぽったせいで予定より手間取ってるのかも」
「なるほどなんだぞ」
「そこでさ、竹千代。お願いがあるんだけど」
 かくかくしかじか。理玖はお腹の子の事を知らないので、西国まで行って先に伝えてほしい。言い終わると、竹千代は怪訝な視線を寄越した。
「……それ、此処で話して良かったんだぞ?」
「え?」
「殺生丸様は犬の大妖怪なんだぞ。襖一枚挟んだだけじゃ、ひそひそ話なんて筒抜けなんだぞ~」
「ああっ」
 しまった。またすっかり忘れていた。
「俺は怖くなったので一旦帰るんだぞ! これお土産だぞ! それじゃあ体に気をつけるんだぞ~!」
 次の瞬間には居なくなっている。逃げ足が速い。
 って、父上に言い訳しなきゃ!
「あのさ父上! 理玖がこの事知らないのは、理玖が悪いんじゃなくて」
「うるさい」
「ひぃっ」
 思わず土下座体勢になるが、叱責はそれ以上飛んでこない。恐る恐る顔を上げる。
「くろが起きる」
 父上は膝の上の仔犬を撫でた。
「あ、はは……なんだぁ……」
 せつなも邪見もハラハラしてたけど、なんだかんだ父上、そんなに怒ってないんじゃないかな。なんていうか、こう、父上って母上以外は、娘の私達ですらどうでも良さそうじゃない? クロの事は真面目に育ててるみたいだけど。
「やっぱり末っ子は可愛いものなの?」
 そのまま這うように進んで、母上がよくしているように、父上のもふもふの上に座る。
末子[すえご]でなくとも」
「……それって――」
「ただいま~」
「今日は沢山採れましたぞ~」
 タイミング良く(悪く?)母上達が帰ってくる。父上は私を退かすと、クロを預けて母を出迎えに行った。いやぁ、新婚ホヤホヤ(?)の私でもびっくりだよ、我が両親の仲睦まじさ。
「フア、」
「あー起きちゃった」
「アン! アン!」
「泣き声も犬なんだねえ」
 頭を撫でてやると大人しくなる。こんなに無防備で、愛されて育ってるんだなあ。
「……『末子でなくとも』か……」
 ごめんなさい。罪悪感のような、背徳感のようなものが襲ってくる。新しい命を宿すなんて大事なこと、それも正式にお付き合いしていたわけではない人と。どうして先に、家族に相談できなかったんだろう。
 どうして。あの緑の瞳が浮かぶ。
「理玖……」
 今すぐ会いたいような、今は会いたくないような。愛ってなんだろう。ますます解らなくなってきた。

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目次

  1. 実家に帰らせていただきます
  2. 父親
  3. Never come true
  4. 貴方だけのお姫様
  5. 言い訳できない
  6. ましな方の地獄
  7. 一角の甪端
  8. 溺れていたのは
  9. 一緒に帰ろう

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