宇宙混沌
Eyecatch

その返事なら何度でも [4/5]

「へぇ、おいらが居ない間にそんな事が」
「あの後すぐにお前が帰ってきて、バタバタしたからな」
「結局馴れ初めも感想も聞けず仕舞いなんだよね」
(そんなことわざわざ訊き出すなんて、流石に趣味が悪くねえか?)
 理玖は思ったが、二人も自分に言われたくはないだろうと思い、口を閉ざす。
「でさ、私達あれきり竹千代の人型見てないし、どうなったのかなって」
「何かしらの相性が悪くて破局したのかもと思うと、訊きづらくてな」
「それでおいらに、それとなく訊いてくれと」
 想い人とその妹にうんうんと頷かれ、理玖は観念する。何故自分が、とは思わなくもないが、立場的に竹千代を突きやすいのは確かだ。
「竹千代、お前幾つになった?」
 部屋で金の計算をしていた竹千代に声をかける。
「急にどうしたんですか? もうすぐ二十歳だぞ」
「もう嫁さんの一人や二人居てもおかしくねえなあ」
「いや、一人で十分だぞ。殿様じゃあるまいし……」
 子狸の姿をした妖怪からは、色々と突っ込みどころの多い返答がある。
(まあ、頼まれた事だけ確かめれば十分か)
「当てはあるのか? 無ければ紹介するぜ?」
「結構なんだぞ」
「良い[ひと]でも居るのかい?」
 質問の形をしていたが確信を含んだ響きに、竹千代は手を止め、理玖を怪訝な目で見る。
「だから突然何なんだぞ」
「いやあ、船に乗ってると出会いが無いだろ? うら若き少年の青春時代を無駄にするのはねえ」
「理玖様、嘘が下手くそ。だいたい俺は妖怪なんだから、あと千年くらいは老けないし。理玖様だって船の上じゃ女遊びなんか出来ないんだぞ」
「おいらの昔の事については黙っていてもらえねえか!?」
 理玖はぎくりとする。竹千代は溜息を吐いた。
「へいへい。それで、とわの差し金ですか?」
「まあそんなところ」
「俺に一目惚れしたとかなら、丁重に断っておいてほしいぞ」
「お前、とわ様はおいらが唾付けてるって解っててそういうこと言いやがる」
 理玖は竹千代の頭をぽんぽんと叩いて牽制する。
「いやだから断ってって……」
「とわ様はおいら一筋だから! ……多分」
「いつまで経っても、理玖様が尻追いかけてるだけに見えるんだぞ」
「うるせえ! お前は結局どうなんだよ?」
「さてな~」
 子供[ガキ]に遊ばれている、と理玖は察した。竹千代は語るつもりがないらしい。
 諦めて部屋を出ると、双子が期待に満ち溢れた目で此方を見ている。理玖が首を横に振ると、肩を落とした。
「せめて上手くいったのかどうかくらい訊けなかったのか?」
「駄目でした」
「仕方ない。もろはに直接訊こう」

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