宇宙混沌
Eyecatch

君が愛しいのは私を愛してくれたから [8/10]

 二つ目の印は付けさせてもらえなかった。竹千代がアタシの顔を上げさせて、アタシの口を吸ったから。
「……あのさ」
 抱き締められるようにして押し倒される。二度目の口付けの前に、尋ねた。
「お前が隠してる事、夫婦[めおと]になったら教えてくれる?」
「村を出たら教えてやる」
 次の言葉を紡ぐ前に、口を塞がれる。竹千代の舌がアタシの唇を突くように舐めた。
「!?」
「……口開けるんだぞ」
 思わず口を引き結んだら、竹千代が一度離して指示してくる。開けて、何するの?
 問う為に開いた口の中に、舌を突っ込まれる。生温かい、アタシの意思と無関係に動くそれが、舌に絡んだり歯を舐めたりした。
「!?!?」
 何、これ。驚いて突き飛ばそうとした手を、竹千代が握って地面に縛り付ける。唇を離してくれた頃には、困惑と恐怖でいっぱいになっていた。
 そう、怖かった。竹千代はいつも、アタシに何かをくれるばっかりだったのに、その時初めて、アタシから奪おうとしたから。
 竹千代が欲しがってるんだからあげれば良い。先に誘ったのはアタシなんだから最後まで付き合うべきだ。それに、前からずっと思ってたじゃん、竹千代になら抱かれても良いって……。なのにアタシは、その恐怖に打ち勝てなかった。
「竹千代」
 呼ぶと、竹千代は着物の上から胸を撫でていた手を止めた。
「やっぱり駄目だって……こんなの……」
「何が?」
 竹千代は困惑した表情でアタシを見た。そりゃそうだよな。くれるって言われたから食おうとしてただけなのに、お預け食らったんだから。
 申し訳なくて、思い切り突き飛ばして逃げた。
「もろは!」
 その時の竹千代の傷付いた表情で、悟る。誰でも良いわけじゃないっていうのは本当だ。竹千代はアタシが欲しかったんだ。
 ごめん。本当にごめん。竹千代はアタシを愛してくれたのに。いや、アタシも竹千代のことは好きなんだけど、今此処では、無理だ。

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