宇宙混沌
Eyecatch

君が愛しいのは私を愛してくれたから [7/10]

 山菜採りにはすぐ飽きた。けれど竹千代は、すぐには屍屋に帰ろうとしなかった。
「竹千代は誰に教わったんだ? 料理」
「自分で色々やってるうちに覚えたんだぞ」
「へー」
 見つけた花畑に座り込み、花輪を作る。
「良いなー。竹千代と結婚したらあの美味い飯毎日食えるのか」
「結婚しなくても、今も毎日食べてるんだぞ……」
「そうだった」
 編み終えて、花輪を竹千代の頭に乗せる。
「海の向こうの国の偉い人はさあ、こうやって冠を頭に乗せてるんだって。お前偉そうだから乗せてろよ」
「どこでそんな知識手に入れるんだぞ」
「うーん、出先の町の人とか?」
「ふうん。これ食える花だな」
「ああっ! 食うのかよ!」
 竹千代は花輪を取ると、一瞥して籠に突っ込む。アタシはその中を名残惜しく覗き込んだ。折角編んだのに。
「食わなければ萎れるだけだぞ」
「そりゃそうだけどさ~」
 振り返ると、瑠璃紺の瞳と目が合った。
「もろはは俺と結婚したいか?」
「えっ!?!?」
 唐突に言われて、狂った手元が籠をひっくり返した。
「いきなり急に何だよ!?」
「いや、結婚とか言い始めたのお前なんだぞ……」
「したいって言ったらしてくれるのかよ!?」
「構わないぞ」
「えっ、良いの?」
 言ってしまってから、少し後悔した。そりゃ、竹千代の傍には居たいんだけどさ。結婚って。話飛躍しすぎ。
「いや、その……アタシ四半妖だし、つかお前とだと、犬と狸だし」
 大体、竹千代が本当に狸平の若君なら、許されないだろアタシとなんて。いや、若君じゃなくても、混血なんて選ぶ利点無いじゃないか。
「お前の親は半妖と人間だし、更にその親は犬と人間なのでは? それよりはまだ近いんだぞ、多分」
「それに、アタシは借金あるし」
 混血なのは気にしないのか。けど、金がなくちゃ子供も育てられない。
 竹千代からは、完全に予想の範疇から外れた言葉が出てくる。
「踏み倒せ」
「えっ」
「というか、もう今日このまま行方を晦ますんだぞ。元はと言えばお前の借金じゃないだろ?」
「大半はそうだけど、それって……」
 獣兵衛さんを裏切ることになる。竹千代も、獣兵衛さんには恩義があるんじゃないのかよ!?
「俺と一緒になりたくないのか?」
 竹千代がアタシの手を掴んだ。
 それはこっちの台詞だ。竹千代は、なんでアタシと一緒になりたいんだ? どうしてこんなに急いてるんだ?
「竹千代は、誰でも良いってこと?」
 言って俯く。それしか理由が思い浮かばない。
「良いわけないが、どうせ信じないんだぞ」
 竹千代は手を放すと、その胸元を開けた。
「浮気できないようにしたら良い」
 目線を上げる。言ってる意味が解らない。
「他の女が噛んだ痕があったら、おちおち他所では寝れないんだぞ」
「……どこでそんな知識手に入れるんだよ」
「教えな~い」
 子供扱いされた気がして、アタシは頬を膨らませた。どうせその他所の女に手解きしてもらったんだろ。
 ……他所の女に……。
 アタシは傷一つ無い竹千代の肌を見る。頭がくらくらするほど顔が熱かった。
 竹千代が仕向けたんだからな。アタシは心の中で責任転嫁すると、考えるのはやめて、ただそうしたいままに唇を竹千代の胸に押し当てた。

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