第1話:二人の里帰り(前編) [4/6]
「お前本当に色気の欠片も無いんだぞ」
「く~~~腹立つけどその色気しかない顔で言われると何も言えねえ~~」
従姉達に比べて控えめな膨らみ方の胸を撫でた。理玖様がとわにしているみたいに、印を付けたい気持ちはあるが、祝言前だしできるだけ痕跡が残らないようにしないと。
「あっ」
俺の手が胸の先に触れると、もろはが思わずといった風に声を漏らす。その声は普段の声とは違って甘くて、俺の背中をぞわりぞわりと撫でるようだった。
「色気は無いが破廉恥なんだぞ」
「そんなこと、あっ、ない、んんっ」
揉みしだけば動きに合わせて喘ぐ。まだ胸しか触ってないんだぞ。お互いどこまで正気で居られるか不安になってきた。
上気した顔に引き寄せられて、再び唇を寄せた。舌で唇を押し、開かせる。
「んっ……」
もろはは羞恥に堪えられなくなったのか、目をぎゅっと瞑った。俺が体を撫でる手を徐々に下にやると、口の中で声が反響する。
「……っはあっ。竹千代!」
「なんで怒ってるんだぞ」
「そりゃあ、だって……アタシ初めてなんだよ!」
「だからゆっくりしてやってるんだぞ」
もろはの腿を撫で、尻を揉む。もろはは紅潮した顔を腕で隠した。そうすると胸から何から、首から下は丸見えなんだぞ。
吸い付きたい気持ちを抑えられなかった。なんとか印を付ける事だけは避けて、乳の先にする。吸って、それから舌でつついたり包み込むように舐めれば、もろはは嬌声を上げながら俺の頭を抱え込んだ。
「う~~~」
唸るような声に、やめて顔を上げると涙を浮かべていた。
「痛かったんだぞ?」
「違う」
「嫌だったか?」
「違う! お前こんなの、何処で誰に手引きしてもらったんだよ!」
俺は溜息を吐く。よりによって今この場で、俺の人生で一番辛かった事を思い出させるな。
「実家で指南役に。満月狸の封印が解かれた時、狸穴将監への対抗策として、皆が早いとこ俺を元服させて当主にしようとしたんだぞ」
だが幾らなんでも早すぎた。その性急な動きが、将監を俺の呪殺へと衝き動かしたのだろうとは思う。
「そうしたら形だけでも、いつ誰を娶るか知れなかったから」
「……そっか……」
「どうせ他の女と寝たとでも思ったんだろ」
「そ、そうだよ!」
「可愛いなもろはは」
無意識に漏れた言葉に、もろはの顔は完全に火鼠の衣と同じ色になった。
「……続けて良いか?」
頷いたのを確認して、手を秘部に宛てがった。もろはの肩が震える。
「やめてほしかったら無理せず言うんだぞ」
濡れた体の、一箇所だけ肌を覆う水の質が違う。そこを指で押すと、一本だけならそれほど引っ掛かりもなく入った。中は流石にもろはの方が熱いな。
反応が無くて怖いが、そのまま前後させる。もろはは俺にしがみついて、小さく声を漏らした。
「竹千代」
「痛いか?」
呼ばれて顔を覗き込むと、今度はもろはの方から口付けてきた。顔が離れた時、俺は笑ってしまう。
「何笑ってんだよ」
「いや」
濡れた髪をぽんぽんと撫でながら答える。
「ここまで生き延びた甲斐があったと思ったんだぞ」
何もかも奪われて、自分が何者なのか解らなくなっていた。それでも勝手に死ぬ事すら許されなくて、終わりの見えない逃亡生活に心が壊れかけた事は何度もあった。
それでも、俺が弱音の代わりの暴言を吐く度に、もろははそれを打ち返して、次の日にはケロッと忘れていてくれた。俺の抱えていた事情なんか知らなかったのに。事情があったとしても、俺がもろはに投げつけてきた言葉には、許してはいけないものも含まれている。
「ありがとうもろは」
謝れば許しを請うているように見えるだろうと思い、代わりに礼を言う。
「別にアタシは何もしてねえよ」
もろはは俺の傷を撫でる。血はもう止まっていた。
「アタシの方こそ、いつもありがとう」
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