宇宙混沌
Eyecatch

一生分の愛を君に [3/7]

「お前単純な奴だと思ってたけど、今日は何考えてるのかさっぱりなんだぞ」
「何だよそれ! 男女が床の上でする事は一つしかないって言ったのお前だろ!」
「そうだけど。そんなつもりで入ったんじゃないだろ? そもそも俺達、恋仲でもなんでもないんだぞ」
「じゃあ何」
「……何だろうな」
 初めは身請けされた子供と、そのお目付け役だった。いつの間にか一緒に賞金稼ぎをするようになっていた。もう二人に仕事を続ける理由が無くても。
 竹千代が腕を引く。もろはは掴んだまま離さない。
「え、まさか本気なのか?」
「そうだよこの鈍感!」
 そう叫んだが、言葉を向けた相手にはもろは自身も含まれる。
「アタシがその辺の狸に『一緒に暮らそう』なんて言うわけないだろ!」
「元々一緒に暮らしてたからだと思ってたんだぞ……」
「そりゃそうなんだけど!」
 もろはは竹千代の腕をぶんぶんと振り回す。竹千代はされるがままに、もろはの乱心の理由を探した。
(こいつ俺のこと好きなのか?)
 にわかには信じがたいが、否定する材料も無い。いつだってもろはは竹千代を背に庇ってくれた。抱かれて歩く事も最近は多かったが、その度後頭部に胸が押し付けられていたのもわかっている。もろはは無意識で気付いてないのだろうと思っていた。役得だから黙っていたが、それがわざとだったら?
 竹千代はその場に蹲った。
「竹千代?」
「こんな形で気付きたくなかったんだぞ……」
 もろはの気持ちにも、自分の気持ちにも。
 狸平の家督を弟に譲った時のことを思い出す。当主の方がままならぬことが多いと知っていて、菊之助に押し付けた。何がままならないって――もろはの傍に居ることが。それが本音だ。
 竹千代は顔を上げる。黙って見下ろしていたもろはと目が合った。
「俺で良いのか?」
「竹千代が良いんだよ」
「変わった趣味なんだぞ」
「狸も犬もそう違わねえって」
「お前はどちらかというと人間だぞ」
 もろはが少し寂しそうに笑う。二人共解っている。生粋の妖怪と四半妖では、流れる時の速さが違うこと。
「そんなに俺が良いなら貰ってやるんだぞ」
「なんだよそれ。竹千代はどうなんだよ」
 竹千代は緩んだもろはの手から腕を抜いて、今度はその手を取った。
「もろはが良い」
 理玖が時々とわにしているように、手の甲に口付ける。
「こっちにしてよ」
 もろはが竹千代に上を向かせ、自分の唇を指した。次の瞬間もろはは天井を見ていて、それから息が続かなくなるまで竹千代に口を塞がれていた。

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