宇宙混沌
Eyecatch

第3話:少女達の事情 [2/4]

「じゃあね、お母さん。また来るね」
「大事にしてください」
「ありがとう。とわ、せつな。楽しみにしてるね」
 二人は母が入院している病院を出た。
「まっすぐ帰る?」
「ああ」
 二人の母親は、二人を産んだ直後に体を悪くし、以来ほぼずっと入院している。となると父親がワンオペで育児をすることになるが、流石に働きながら双子の世話は無理だ。
 しかし双子を同時に引き取ってくれる家も無い。二人はそれぞれ違う家庭に預けられ、中学に上がる歳になって漸く、自分の事が自分でできるようになったから、と実家に戻された。
 だから双子だと言っても、姉妹をやるのは実質二年目だ。まだ少し、心を許しきってない友達みたいな関係で。
「そういえば、もろははちゃんと家に帰ったのだろうか」
「確かに」
 もろはのことを知ったのも、中学に入学した時だった。入学式には父が来てくれて、家に帰ってきた後、父の専属秘書の邪見が遅れてやって来た。
『良い感じに撮れたと思うのですが……』
 邪見はいつも顔色が悪いが、本人は至って元気なおじさんだ。邪見がビデオカメラから取り出したカードをパソコンに差すと、別の中学の入学式の映像が流れた。カメラは小柄な少女を主に追っている。
『この子誰?』
『お前達の従妹のもろはだ』
『えっ!? 私達、従妹居たの?』
『父母にきょうだいが居ること自体初耳ですが』
『私に弟が居た。その娘だ』
 居た。過去形の説明に、薄っすらと事情を察する。
『……生きて戻って来たら、見たいじゃろうからな』
 邪見は言うと、カードを取り出して丁寧にケースにしまった。
『後でちゃんと焼いた物をお送りしますので』
『頼んだ』
(で、その後中学を特定して、二人で乗り込んだんだっけ。私が喧嘩で有名だったから、校門で待ってたらあっちの先生にめちゃくちゃ警戒されたんだよね……)
「確かめに行く?」
「いや、家知らないだろ。あいつスマホも持ってないし」
「えーじゃあどうするの?」
「手も足も出ないな」
「あーなんでこの情報化社会でスマホ持ってないかなあもろはは!」

闇背負ってるイケメンに目が無い。