宇宙混沌
Eyecatch

子供の遊び [7/9]

 約束通り、もろはは初めての月のものの際に竹千代に伝えた。竹千代も嘘偽り無く二人の行為の意味を教えたが、その頃にはもろはもなんとなく理解していた。その上で竹千代が中に入ってくるのを許していた。
「許せないか?」
「何が?」
「何って……黙ってお前を汚したこと」
「別に? そんな大事に取っとくようなもんでもねえだろ」
 その言葉に半ば呆れつつも、そんな危うさがあったから独占しようと先手を打った面も無きにしもあらずで、竹千代は言葉に困る。
「……とにかく、孕めるようになったからにはもうしないんだぞ」
「ええ~」
 もろはは子狸の鎧の下に手を突っ込む。
「この姿で弄られても何とも無いぞ、子供だからな。第一お前、今日は股から血が出てるんだぞ」
「そうだった」
 もろはは渋々手を引く。
「月役終わったらまたしてくれる?」
「しない」
「なんで?」
「万が一にも子供なんてできたらどうするんだぞ。お前は借金背負ってるし、俺は……」
 その続きは、まだ言えない。
「ふん! ならもう良いよ!」
 もろはは怒って立ち上がる。
「早いとこ借金返して、お前より床の上手い男と夫婦[めおと]になってやる!」
「そうすれば良いんだぞ」
 竹千代が言った途端、もろはは竹千代の頬を叩いて張り倒す。バタバタと屍屋を出て行った。
「……一発殴られて許されるなら安いもんだぞ」
 竹千代は目を瞑り、初めて体を重ねた時のことを思い出そうとする。もろはの赤くなった顔も、聞いたことのない甘い声も思い出せるのに、この子狸の姿では全てが色を失う。
 だがそれで良い。これが唯一自分を制止できる方法ならば、竹千代はもろはの前では二度と人型になるまいと誓った。
(身元を明かさなくても、もろはは居なくなったんだぞ)
 最初から解っていたじゃないか。一線越えれば嫌われてしまうことくらい。
 小さな手で顔を覆った時、りぃん、と音がした。
「泣いてるところ悪いんだが」
 理玖は竹千代を見下ろす。
「伴を頼むよ」
「この姿のままで良いなら」
「町中では目立つから、人型の方が嬉しいけどねえ」
「どうせ俺と理玖様が並んでたら目立つんだぞ」
「それもそうか」
 竹千代は顔を拭って立ち上がる。理玖は純粋に疑問に思った。
「女ってのはそんなに良いもんかねえ」
「俺は女が好きなわけじゃないんだぞ」
 誰でも良かったわけじゃない。買おうと思えば幾らでも買えたのだから。痛みや罪を背負ってでも、繋がりたいと思った相手は一人なのだ。
 遊びなんかじゃなかった。出来たら取り返しがつかなくなる前に、そう気付きたかった。
「ふうん」
 理玖は興味が無さそうに呟くと、竹千代の支度を待つ間、外に出て浜に座る紅い影を眺めていた。

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