宇宙混沌
Eyecatch

子供の遊び [4/9]

 もろはは、人間の姿になった竹千代の口が自分の口を塞いで、舌が中を弄っている事に呆然としていた。
 行為の意味や理由を問い質すべきだ、とは思いつつも、頭が回らない。ここ数日の記憶が全部すっ飛んでしまいそうなほど、それは衝撃的で、倒錯的で――本当に何処か甘かった。
「ぷはぁ」
 長い長い口付けの後、やっと解放される――かと思いきや、竹千代はもろはを抱いた腕に力を込める。
(何だ? 固いの当たってる……)
 下腹部に押し付けられる何かに身じろぎすると、竹千代が深呼吸した。
「怒ったか?」
「なんで?」
「勝手に口吸ったこと」
「別に? ほんとにちょっと美味しいな」
(そんなわけあるか)
 怪訝な目でもろはを見下ろしたが、もろはは竹千代の首に腕を回してもう一度と強請る。再度飽きるまで重ねてから、竹千代は釘を刺した。
「獣兵衛様には内緒だぞ」
「なんで?」
「止められてるんだぞ」
「なんで?」
「…………」
 まだ素性を明かすつもりはない。明かせばきっと、もろはも自分から離れていく。なんとなく、そんな気がしていた。
「まあ良いや。二人だけの秘密か。なんかすごく悪い事してる気分」
「してるんだぞ、悪い事」
「そうなの?」
「獣兵衛様以外にも黙っておくのが無難だぞ。それと、俺以外とはするなよ」
「よくわかんないけど、解った」

『よくわかんないけど、解った』
「ま、言われて[]められるなら、色恋に関する揉め事なんてこの世に無いわけで」
 理玖は獣兵衛と双六に興じていた。脇には白い巻き貝が置かれていて、竹千代ともろはの会話を伝えている。
「竹千代が本気なら、俺も構わないのですが」
「へえ、遊びだって?」
「竹千代はまだ子供です」
「つっても、もう元服しててもおかしくないだろ」
「だとしても、狸平がもろはを娶ることを許すとは思えませんな」
「犬の大将の孫娘じゃなかったのかい? どうせ側室を山程抱える事になるんだから、一人くらい狸じゃなくても構わねえだろ」
「理玖様がそう思われましても……」
 獣兵衛は首を振る。
『今日はもう帰るんだぞ』
「おお、我慢したか。偉い偉い」
「理玖様、もしや楽しんでますな?」
「色恋沙汰なんてからきし興味が無かったが、知ってる奴の話を聞くのは興味深いね」
 獣兵衛は貝の音を止める。勝負もちょうどついたので、理玖は立ち上がった。
「また来るよ」
 歩いて船まで戻る途中、頭上に丸い狸の影が見えた。
「女ってのはそんなに美味いもんかねぇ」
 その尻尾を振り返り、呟く。肩をすくめると、理玖は再び歩を進めた。

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