宇宙混沌
Eyecatch

第10話:林檎の瞳、命の赤 [4/5]

 そして迎えた当日。とわは理玖に選んでもらったドレスを持って、竹千代のアパートへ。タカマルが、もろはを含めた三人をまとめて迎えに来ることになっている。
「うわ、真っ赤!」
 二人はもう着替え終わっていて、もろはのドレスは赤一色でできていた。竹千代はもろはの髪をまとめ、真珠の簪を刺す。
「サンキュ」
「竹千代さんって器用ですね。服も作れるし髪の毛もできるし」
「こんなのは全部慣れだぞ。衣装部屋で着替えてこいよ、散らかってるけど」
「お借りしまーす」
 そこは真っ赤な海だった。試作品や失敗作だろうか、もろはが着ているのとは少し形の違う赤いドレス達が、ハンガーラックや床の上に無造作に広げられていた。
「……これ」
 その中に、資料として買ったらしき、ウェディングドレスの雑誌がある。
(あ、いや、いけない。勝手に触っちゃ)
 とわはスラリとしたシルエットの白いドレスに着替えると、上から七色に透けるショールを羽織る。これも理玖が買ってくれたものだ。
「じゃじゃーん」
「おっ、理玖さんも結構センス良いじゃん」
「真珠みたいな色だな」
「まだ時間あるよね。もろはもちょっとはお化粧しよ?」
 とわは化粧ポーチからグロスを取り出す。
「アタシは良いよ」
「んー、でも口紅くらい塗った方が良いかもな。今回のドレス、肩周りは大人っぽいし」
 竹千代に言われて、とわの赤リップを借りる。
「どう竹千代?」
「はいはい可愛い可愛い」
「顔を見て言え」
 しかし、緊張しているのはもろはにも伝わっている。計画のことだけならまだしも、作ったスーツやドレスまで母親に品評されるのは間違いないから。
「タカマルさんが来るまでに、計画おさらいしとこうぜ」
「俺はまず母さんに二人を紹介する。俺の彼女はとわだって誤解してそうだから、それは解いておく」
「その後みんなで理玖さんに挨拶に行く」
「お姉さんにアタシ達を紹介してもらう」
「是露さんが簪に気付く」
「できたらその段階で、狸穴の野郎に近くに居てほしいよな」
「出たとこ勝負だぞ。一応、七宝さんが狸穴に接触した後、俺のところに連れて来る予定ではあるし」
(七宝さん、世渡り上手いんだか下手なんだかよくわからないから、当てにしない気持ちでいよう……)
 アパートの前に車が泊まる音がした。竹千代のスマホが鳴る。
「タカマルさんだ」
「よっしゃあ! カチコミだぜ!」
「もろは~頼むから会場ではお淑やかにしといてほしいんだぞ~」

闇背負ってるイケメンに目が無い。